最終日はまずこちらのトークへ。
💬“複数化した世界”演劇祭のその先ー世界演劇祭2023クロージングトーク
世界演劇祭2023(Theater der Welt2023)は、世界という概念はただひとつ確立されたものではなく実は複数あるのではないかという疑問を提示し、そこから複層的に聞こえてくる声を、歴史を、視座を、複数性を保ったまま提示した。 pic.twitter.com/ezmJpM65Ly
— 芸術公社|Theater Commons Tokyo (@ArtsCommonsT) July 16, 2023
途中、「なぜこれを舞台上で表象しなければならないのか。そして、なぜ私たちはそれを現実上で見ようとしないのか」というような言葉があって
(「これ」が指すのは、確か不可視のものや周縁化されたことについてだったと思うけど記憶違いかも。)
これは自分自身がずいぶん長いこと抱えている「作品受容」と「現実での行為」の間にある大きな壁でもあるから、考え込んでしまった。
(例えば、バック・トゥ・バック・シアター『ガネーシャVS.第三帝国』を観たときにも、その壁について書いているのですが)
私の脳みそは芸術を通して多くの見方を学んでいると言えるけど、それが目の前の現実に接続されたときに、なかなか染み付いた回路を捨てられない(そして、その根底には「恐怖」がある気がする)。
この演劇祭の会期後半に目に入ってきた高山さんのツイートに関連した田村さんのツイートを見て、
白人至上主義とか家父長制とか植民主義的やり方とか、いま社会で見直されている価値観への正しい態度として「リベラルしぐさ」みたいのを身に付けてはいるが、実践には全く落とせていない意識高い系マジョリティは本当にタチが悪い(自戒も込めて)。→
— 田村かのこ Kanoko Tamura (@art_translator) July 16, 2023
「仕草」から抜けられない自分の壁を思ったし、同時に以前よりこの壁は確かに低くなってきたとは思うから、そこに一縷の希望を託して、この滞在で体験したマイノリティでいることで感じざるを得ない日々のいろいろを忘れずに、小さな実践と親切を積み重ねていこうと思った次第。
ちなみにトークゲストの一人は『Abana b’amazi』のCarol Karemeraで、虐殺を経たルワンダの加害者(の家族)と被害者(の家族)が混在するコミュニティで活動することの困難さも語られていて、
ちょうどその日の朝に読んだ関東大震災時の朝鮮人虐殺に関する新聞記事の、「曽祖父が仲間を見捨てて生き延びたのではないか?でも曽祖父が生き残らなければ自分は生まれていなかった」と苦悩する人のことが浮かびました。
虐殺まで行かなくても、突き詰めていけば祖先や自分の所属する共同体や会社などが誰かを虐げる側にいる(た)ことは誰にでもあることで(和人の自分とか)、抑圧した側の「寝た子を起こすな」「臭いものには蓋」的なふるまいではない対応や、共に学んでいくことだったり、結果出来上がってしまった社会システムを共に変えていこうという姿勢が、今必要とされているのだなあ。
世界の困難さは、常に自分が生きる日本社会の困難さでもある。
夜はカロリナ・ビアンキ & Cara de Cavalo『The Cadela Força Trilogy. Chapter I: The Bride and The Goodnight Cinderella』をFrankfurt LABで。
🚙 『カデラ・フォルサ第1章 花嫁と”グッドナイト・シンデレラ”』カロリナ・ビアンキ & Cara de Cavalo
観客は、過去と現在が衝突し、抑圧された経験が戻ってくる空間にいることに気づく。カロリナ・ビアンキは、ここ数十年で起きたレイプ事件を扱っている。このため、彼女は自分自身を最大限に脆弱 pic.twitter.com/238V4N94qJ
— 芸術公社|Theater Commons Tokyo (@ArtsCommonsT) July 15, 2023
これ、多分俳優陣のパフォーマンスの方に見入っていて、ひっそり横で更新されていた字幕を見落としたのだと思うのだけど、アヴィニョン演劇祭での上演に対するThe New York Timesのレビューを読んで衝撃を受けました。
確かにあった暴力を、どうしても思い出せないこと。
確かにあった暴力が、忘れられてしまうこと。
それがこういう形で届けられたことに対して、どう受け止めればいいのか、ちょっと現段階では言葉が見つからない…。
もう少し時間をかけて考えて、後日追記しようと思います。
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※7/21追記:書き忘れていたのだけど、途中「何か異変が起こっているような…」というひそやかなレベルで始まり、ひたひたと身体に迫りくる音響がとても格好良かったです。あとフェミサイドや性暴力を扱っているだけに、上演中はいつでも会場から出れること、気持ちが落ち着くまで待機できる部屋があること、必要であれば専門家(「wellbeing advisor」と紹介されていたような)が控えているので話もできること等のアナウンスが丁寧にされていました。
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少し話変わり
初日にも書いたのだけど、
私が演劇に目覚めたのは、相馬千秋さんがプログラム・ディレクターを務めたフェスティバル/トーキョー2012を観たことで、世界演劇祭のプログラム・アドヴァイザーを務める岩城京子さんもF/T2012のブログキャンプ in F/Tで代表をされており。
※上記についてはこちらのブログに書いてます。
以降もシアターコモンズやあいちトリエンナーレ2019等、相馬さんがキュレーションする作品やアーティスト、そして岩城さんの著書から、自分の興味がどんどん広がっていった経緯があり。
この世界演劇祭も、2021年にお二人がディレクター&ドラマトゥルク(岩城さんは後にプログラム・アドヴァイザーへ)を務めることが発表されてから、ずっと観劇に来ることを目標に英語の勉強を頑張ってきた身として、
今回素晴らしい作品にたくさん出会い、自分の感覚や思考が変容する体験をし、フランクフルトまで足を運んで本当に良かったとしみじみしています。
本当にありがとうございました。
搭乗が迫ってきたので最後駆け足になってるけど、とりあえず!
※フランクフルト滞在のブログはこちらにまとまってます。
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