札幌座『郷愁の丘ロマントピア』をシアターZOOで。
山田百次さん(ホエイ・劇団野の上)作の本作。山田さんの作品は2016年にZOOで上演された『珈琲法要』『或るめぐらの話』の2本立てを観て以来です。(当時の感想ブログはこちら)
この『珈琲法要』と、もう一つ『麦とクシャミ』という作品と、今回の『郷愁の丘ロマントピア』が「北海道三部作」と銘打たれているのですねー。
『郷愁の丘ロマントピア』は2018年にこまばアゴラ劇場で初演されていて、それを今回「その土地の作品は、その土地の俳優で上演しその土地の観客が観る。このことの重要性をすごく感じています。」と山田さんの作品コメントにあるように、札幌座での上演となったのでした。
上記リンク先の作品紹介には
そして夕張にはもう一つの街があった。現在の市内中心部から東へ20キロほど離れた夕張川の上流にあった三菱大夕張炭鉱を中心に形作られた街。現在はダムの底、シューパロ湖の湖底に沈んでいるその街にも、2万人ほどの人が住んでいた。
とあって、私は今回初めてそれを知った身。本作はそのダムに沈んだ街に暮らし、炭鉱で働いてきた4人の男性の当時と現在のお話です。
自分も仕事柄、元炭鉱マンの方からお話を聞く機会は何度かあったし、エネルギー史というか産業史というかそういう大きな流れももちろん知ってはいるけれど、
特にやっぱり事故のことは、演劇で目の前にいる人から受け取るとしんどくなりそうで、炭鉱関連の演劇作品はつい見送りがち…。
なのですが、山田さん作はやっぱり観たい、ということで観に行って
聞かれるべき誰かの物語や思いは無数にあるものだし、自分的にネガティブに捉えがちなある世代の態度にも無数の背景があるものだ、
と思った次第。特に出産に関する物言いは、「いや、あなた産んでないしぶっちゃけ育ててもないですよね」とつい思ってしまうのだけど、それにぶち切れることのできる若い女性が出てくる現代で良かったと思うし、
しかし女性が爺さんに対して一方で「言い過ぎたかな…」と思える人で良かったとも思うし(ある世代の態度にも無数の背景があるものだと想像するための片鱗を本作で手に入れたから、そう思う)
かといって、本作はその爺さんたち4名を肯定しているわけでも否定しているわけでもない、と感じれたところも良かった。肯定や否定というジャッジを超えた、淡々としたあり方と言いますか、誠実さだと自分は思う。
気持ちが大きくたくさん動いて、観劇後は疲れました…。うう涙。
ちなみに2020年の札幌座のオムニヴァス朗読劇「すすきのを爪弾く『今は逢えない~七夕の憂哀歌(ブルース)』」で納谷さんが居酒屋店主を演じたときにも思ったけど、
彼が北海道民のおじちゃん&じいさまを演じると、イラッときても、そこ含めて妙に受け入れてしまう人間くささというか、北海道なまりな言葉が全てチャラにしてしまうというか、なんか好きなんですよねえ。
本作で若い頃を演じたときの、冬用帽子かと思ったカツラにも笑いました。
それにしても山田さんの北海道三部作。昭和新山の噴火を題材に、天変地異と戦争に一挙に巻き込まれた市井の人びとの日常を描いた『麦とクシャミ』もめちゃ観たいし(ホエイの『麦とクシャミ』紹介ページはこちら)
ふと『天変地変人禍に抗して 北海道の災害と文学』のことも思い出しました。
図録を引っ張り出してパラパラ眺めつつ、(人禍パートにはもちろん炭鉱事故もあり、それを扱った文学作品も紹介されている)
いやーこの図録に載っている作品、ちゃんと読まねばー、と改めて。まずは船山馨『石狩平野』と熊谷達也『海峡の鎮魂歌』からだ。(ポチッた)
話戻り、
『麦とクシャミ』も札幌座でやってほしいな〜
と軽く言ったところで
終わり!
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