高嶺格『歓迎されざる者 北海道バージョン』をSCARTSで。

その時期は、文学館での展示『天変地変人禍に抗して 北海道の災害と文学』の図録を読み進めておりまして。

地震、津波、台風、豪雨、噴火泥流などの天災地変に加えて、近代化を急ぐゆえに人権を無視して強行された愚行と人為的惨禍が凝縮された一冊なのですが。

無数の人間が自然に一瞬でさらわれ、同じ人間からは死ぬまで酷使され、そういった数多の犠牲者(犠牲者と捉えられていなかった犠牲者も)への弔いは忘れ去られ、

た、果てに今の私たちの生活がある。

この土地は、和人の権力者による「自然に対する敬意の欠如」「人権に対する意識の欠如」とともに「北海道」としてスタートし、国にとって有益な土地に変容させるべく、政治的・社会的・経済的に「歓迎されざる者」を送り込み使い捨てることで、現在へと至った土地なのだなあ。

「歓迎されざる者」

と書いた通り、図録の読書体験と『歓迎されざる者 北海道バージョン』での鑑賞体験が素晴らしくリンクし、

『歓迎されざる者 北海道バージョン』での時間を通して、この土地が持つ記憶の、この土地に生きたあらゆる個人の記憶の、抗いつつも決して癒えることのない傷口を思って涙したのでした。

詩の言葉に耳を傾ける、ああいう時間を通さないと気付けない、自分や、もっと大きなものの傷。

過去から今に続くあらゆる人たちの生きた経験の中で、どの立場に自分を寄せて見るかで、被害・加害はくるくると反転するので、まるで自分が賽の河原にいるような錯覚をし、朗読の終わりとともにスクリーンの文字を覆うように燃え盛る炎と、鳴り響くムックル&ディジリドゥの音色に頭がボウッとしてしまった…。

ちなみに文学館の図録からまず読んでみようと思ったのは、

船山馨『石狩平野』、中井英夫『虚無への供物』、熊谷達也『海峡の鎮魂歌』、吉村昭『赤い人』。

秋の夜長のお供にしよー。

(編)

 

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