読んだ本、二冊目。
キム・スム『ひとり』
キム・スムの本は、『さすらう地』に続いて二冊目です。
旧日本軍従軍慰安婦の証言から紡がれた物語で、タイトルのリンク先(出版元の三一書房による本書紹介ページ)にある筆者の言葉を引用すると、
私が書きたかったのは、加害者か被害者か、男性か女性かを越えて、暴力的な歴史の渦の中でひとりの人間が引き受けねばならなかった苦痛についてです。
そして、その苦痛を「慈悲の心」という崇高で美しい徳に昇華させた、小さく偉大な魂についてです。
というもの。
想像なんて絶対できない、あまりにも酷な、地獄とはこういう場所だと思うくらいの苦痛を何年にもわたって味わって、
そこを生き抜いてからの、解放後の混乱と朝鮮戦争の混乱の中で故郷にたどり着くまでの何年にもわたる苦しみと、その後あまりに重いものを背負い続ける人生と。
この書評では、文中に出てくる「神様も代わりに言ってあげられない一言」という表現に触れて、慰安婦被害者が加害者である日本政府から待ち望んでいる一言は「申し訳ない」だ、と書いているのだけど、
95年の河野談話での謝罪の言葉は、どう受け止められたのだろうか。ほんの少しでも救われた人はいたのだろうか。
パク・ユハ『帝国の慰安婦 植民地支配と記憶の闘い』も、もう一度読み直してみよう。
そして、被害を受けた少女たちが、強制的に連れ去られたにしろ、(工場等で)お金を稼げると騙されて連れてこられたにしろ、当時の朝鮮人は日本の植民地支配下における凄まじい人的・物的搾取により極度の貧困下にあったのだということも、知っておかなければならないことだと思いました。
キム・スムは『Lの運動靴』も読まねば。
ちなみにこの記事を見たら、
『ひとり』の翻訳は昨年終わったが、本を出版することを決心する日本の出版社はなかった。この時に名乗り出たのが三一書房だった。三一書房は日本が第2次世界大戦で敗戦した直後の1945年10月に創業された。出版社と同じ建物で在日同胞が営んでいた古書店「三一書店」から社名を取ってきた。古書店の名前である三一は「3.1運動」から取ったものだった。
と書かれていて、三一書房の社名に関するエピソード、そうなのですねえ。
日本語版を出版してくださってありがとうございます。
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