船山馨『石狩平野』に続いて、『天変地変人禍に抗して 北海道の災害と文学』からの二冊目は、熊谷達也『海峡の鎮魂歌』。
1934(昭和9)年の函館大火、1945(昭和20)年の函館空襲、1954(昭和29)年の台風15号による洞爺丸沈没という、わずか20年の間に起きた三つの大災害を全て経験した潜水夫・敬介が主人公の物語。
私は函館生まれで(3歳で札幌に引っ越してきたけど)子どもの頃から祖母が住む宝来町や末広町〜元町付近にわりと慣れ親しんでおり(逆に五稜郭方面はほとんど行ったことがない)、本書に出てくるエリアとやや重なるので想像しやすい一面も。
それにしても、読み始めてすぐの函館大火、恐ろしや…。
でも、この本を読んで一番印象に残ったのは、次のくだりです。
どんなに大荒れに荒れようと、それは海の表層での話にすぎない。海の本当の顔は海中と海底にこそある。そこでの海は、人間のみならず、すべての生き物に対してどこまでも寛容だった。それが海の本質であった。
この境地…!
自然環境って、本当にいろいろな要素が複雑に絡んで変化しながら、さまざまな現象へと結びついていくものなのだと、お山暮らしを通じて実感してきたところなので、
それが海となるとその複雑さは自分には計り知れないものがあり、「地元の海を知り尽くす」という言葉の重みをめちゃくちゃ感じるのだけど、
海でも山でも畑でも、何十年も自然と向き合ってきた人じゃないと辿り着けない境地や、手に入れられない知識というものがある。
とはいえ、知り尽くす、ということが決してないのがまた自然なのだろうなあ。
そんなことを考えたり、洞爺丸の沈没の描写に触れたりしながら、知床の事故のことを考えずにはおられず、胸が塞ぎました。あれは人災…。
話戻り、
本書で母船式北洋サケ・マス漁のことも出てきて、自分の叔父が独航船に乗っていたこともあり、母船式北洋サケ・マス漁のことが出てくる小説も読んでみたいなーと思った次第。
で、函館市北洋資料館にも行ってみたい。
ここ1、2年の蓄積で、その場所で何を知りたいか、何を見たいか、という部分が結構更新されたので、来年函館も少しのんびり滞在して見て回りたいな。
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