3年ぶりの開催となった教文短編演劇祭2022へ。

投票形式がやたらと久しぶりに感じつつ。

私は今回、制作を手掛けている教文情報誌『楽』で座談会を開催した関係で、各作品の台本を読ませていただいての観劇でした。

ということで

1作目はイチニノ『第3回全日本もう帰りたい選手権(終)』。

圧倒される台詞量とその熱量がポイントの作品なのですが、2019年にもいくつかの劇団で思った、大ホールならではの「役者さんのセリフが聞き取れない」問題が、まさかの本作で勃発。

これは実にもったいなかった…。小劇場での上演だったら、また全然違ったのだろうなあ。

2作目はきまぐれポニーテール『あたしとあなた、とお前と貴様』。

これは台本からあまり見えてこなかった世界がフワッと立ち上がっていて、興味深く拝見。

ヤンゲスト、ややヤング、ミドルエイジな男性が並んでいて、ある女性に一目惚れしたことをそれぞれ語るのですが、「ああ、これは、若い頃にある女性に恋して、今も思い続ける男性の年齢を重ねた姿なのか」ということがわかってきたところで終了。

講評でも語られていましたが、本作の構造がスッと伝わるような整理を何かもう少しできていたら、本作が持つ「人生をギュッと詰め込んだ」魅力にもっと入り込めたのかも。

入り込んでみたかったな。地元劇団の作品なので、またどこかで観る機会があるといいな。と願いつつ。

3作目は空宙空地『グ、リ、コ』。

空宙空地は本作で2019年に続いての優勝と俳優賞をかっさらっていったのでした。強い…!実際作品もすごく良かったです。赤い糸で景色をガラリと変えるところも印象的。

なのだけど、

私が一票をいれたのは、4作目のパスプア『幽と現のあいだ』で。(ってことを書いて、2019年も同じように『ショウアワセルフ』が文句なしの作品だったのに違う団体に一票をいれているあたりに、自分の傾向を感じた次第…)

それはさておき

『幽と現のあいだ』も、台本からは想像しなかった世界が立ち上がっていて、とても楽しく拝見。

心臓も脳も止まって死んでいるのに、なぜか本人は働き続けるという設定で、最後に本人が発する

「今生き返ったら、いろいろな感情が押し寄せて、きっと耐えられない」という台詞に、寄せるものが多すぎてつかまれてしまう。

この、死んでるのに動き続ける設定は、身体機能で考えると生物的に突拍子もないけれど、感情や思考の面で考えると、割と脳みそに備わった機能として、私たちが合理的に物事を処理するため、あるいは自分を守るために日常的にやっていることでもある。

「気持ちを殺して」物事に向かっている人なんてたくさんいるだろうし、膨大な情報社会で「感情が麻痺」している人や「自分で考えることを放棄」している人だってたくさんいる。

そうしないと、「いろいろな感情が押し寄せて、きっと耐えられない」から。

とはいえ、本能的に備わった重要な機能であるこの脳みそのオートパイロット機能にですね、抗うのはすごく注意力がいるし、すごく負担がかかって疲弊することなわけですよ。

本作で、藤本幽の真逆の「生きている」人間として登場する格好つけ男性の能天気さからは、あまりこのオートパイロット感に抗う感じがないというか、これはまたこれで別方向に死んでるのでは???

本人が気付いてないだけで、「お前はすでに死んでいる」状態なのでは???なんてことを思ったりもした次第。

あとはー

全然話変わりますが、

演フェス特設サイトの方に掲載するコンテンツで、審査員の鴻上さんにお話を聞く中で、目指す形として「演劇関係者じゃない人がたくさん観に来るようなお祭り」というようなお話が出てきまして、

そちらを目指すなら、なんというか(今年は久しぶりのせいか妙に気になったのですけど)当日の進め方に関して、もう少し「初めて来た人の目」を気にした方がいいような気がしました。

来場者は現状、出場劇団だったり司会者だったり、その場に登場される方々のファンが多くを占めているのだと思いますし、そういう人たちにとっては存分に推しの個性を楽しめる場になっていたり、(小さな?中くらいの?)コミュニティならではのアットホームさは一つの魅力でもあるのですけど、

今後もっと多くの人に定着させていくことを目指すなら、少しだけきちんと感というか、かっちり感というか、打ち合わせ念入りにされている感?がプラスされた方がいいのかもしれませんねえ。どうなのかな。

何はともあれ、3年ぶりの開催ということで、まずはめでたい。

次の開催はいつになるのかな〜

(編)

 

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