劇団5454『宿りして』をコンカリーニョで。

弦巻楽団が主催する演劇祭「秋の大文化祭!2023」のプログラムとして招聘された本作。

弦巻楽団代表の弦巻啓太さんと、劇団5454主宰の春陽漁介さんの特別対談記事などもd-SAPにありましたので、ご参考にどうぞ。

で、『宿りして』。

ある日突然、自分を見ている観客の姿が見えてしまったことをきっかけに、自分の周囲の世界が「お芝居」であると気付いてしまった高校教師のお話なのだけど、

最初はそれにパニクッて家に引きこもる彼女が、様子を見に来た同僚に「それって小野先生が主人公ってことですよね?」と指摘されたことから、だんだん観客が望む(と彼女が思う)物語としての面白さを追求していくようになるのですね。

現実社会においても、

出来事を理解するための物語化や自分の主人公化は、状況を客観視するために有用なツールだと思うし、ときにはそれが現実に対処していく原動力にもなったりする。

ただ、どんなに自分の頭の中で次の展開を予想したところで、現実は常に自分の脳内を超えていくし、思った通りにはならないし。

そして、何より自分の人生の観客は自分一人だし。

本作から、他人を観客にしてしまったときの承認欲求や、注目を浴びるためにドラマを求めてしまう心理的危うさ、を自分は受け取りつつ

同時に、幻覚や幻聴は脳のバグのようなものだから、現実社会で認知領域に何らかの病変が生じた人に対する周囲の困惑、とも受け取れる描かれ方だなーと。

そういったことを「演劇」そのものになぞらえた構造で見せてくる作品で、興味深く拝見しました。

最後のシーンは、SNS社会における無数の小野先生に対する、セラピー的な優しい時間だったのでは。

それにしても、ポニーテールの同僚が楽しすぎました。私も彼女のテール部分を「あぶね!」って言いながら巧みに避けて会話したい…!

ちなみに劇団5454、これで劇団ランドリーと読むのですって。

自分の中で勝手にゴヨゴヨと読んでいたので、開演前の挨拶で劇団ランドリーって聞いたときに、プログラムを間違えたかと一瞬慌てましたよ。

(編)

 

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