空間で佐藤壮馬『Entangled Dimensions: 縺れた次元』

白石遊郭の記憶を軸に、遊郭関係者の寄付によって架けられた一条大橋、林檎園、佐藤さんがロンドン在住時代に住んでいた建物の記録、などが映像や彫刻、写真やテキストで展示されているのだけど、

いかに街の歴史や記録というものが、女性の声を奪って、軽んじて、見えないものにしてきたのか、ということを思ってしまって、お腹にグッとくるものがありました。

遊女から搾り取ったお金を寄付して、搾取する側が名士として扱われる一方で、「文献資料を探っても、娼妓によって語られた内容はほぼ皆無で、実際に地域を歩いても、手掛かりはない」(図録から引用)という現実。

男性作家たち(展示には有島武郎と石川啄木の作品からの一節が引用されていた)は自分たちに都合の良い範囲で女性をロマンチックな存在に見立てあげて作品内に登場させるけれど、それは社会構造を変えるようなものではなく、むしろ視点を固定化させるようなもので。

(とはいえ、腐敗しかけたリンゴが閉じ込められた彫刻をやっぱり美しいと思ってしまう自分にも、暴力的な身勝手さで不幸にロマンを見出して鑑賞して消費する視点があるのだとは思う。)

なんというか…自分は旅先でまず歴史博物館に訪れるのが好きなのだけど、そういう展示に登場するのは大抵男性ばっかで、以前は何の疑問も覚えず接していたそれが、最近は少し辛い。という段階から、

世界演劇祭を経てさらに辛さの感受度が増してしまった感があり、それゆえ本展でも尚更堪えたのだと思った次第。

でも空間、とても良い場所だったなー。

記録2冊ともゲットしました。

今後の展示も楽しみです。

(編)

 

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