イ・ヘミ『搾取都市、ソウル ─韓国最底辺住宅街の人びと』読了。
映画「パラサイト 半地下の家族」で半地下という住居が韓国にあることを初めて知ったのですが、そのさらに下にあたる住居があると。
「地屋考の下、チョッパン」と目次にあって、地が半地下、屋が屋上部屋、考が考試院と呼ばれるキッチンやトイレ、シャワー等が共同の簡易宿泊施設のようなところ、そしてチョッパンは部屋をいくつかに小さく分けて作る3平方メートル前後の小さな部屋のこと。
チョッパンは非住宅に分類されるので法律の保護もないけれど、保証金なしで月極や日割りの家賃で入居できることから、ホームレスになる一歩手前の貧困層が利用するのだそうな。
韓国日報の記者である著者は、住人への取材から家賃を徴収する管理人とは別に大家がいることを知り、各チョッパンの登記簿謄本から所有者の名前や登記の年度や経緯を整理していきます。
その結果、「見えない」富裕層がチョッパンを所有し、彼らが坪単位で通常のマンションの何倍にもなる家賃を貧困層から搾取している実態と、持たざるものがどんなに頑張っても搾取され続ける社会構造が見えてくるという…。
学生街のチョッパンも相当酷くて、極狭スペースにトイレとシャワーが押し込まれている描写からは、先日泊まったソウルのゲストハウスのバスルーム↓が思い出されたり。
ここ↑には小窓と換気扇が付いていたけど、文中で紹介されていた部屋のバスルームには窓も換気扇もなく、部屋の壁にはカビができていたとか。…無理!!
そして窓のない部屋というのもきつい。
こんな家は日本にはないよね…?と思ったら、なんと日本にも脱法ハウスと呼ばれる劣悪住居があったのでした。そういえば以前その名前をニュースで見たような…。
著者が「最後に」のところに
すべての個人にとって家は生活の中心である。雨風をしのぎ、犯罪の危険から身を守り、外の活動でたまったストレスを解消する場所。私たちは社会生活で削りとられた心の欠片を、家の中で自分をいたわりながらまた埋めていく。たまった洗濯をし、ネットフリックスを見ながら。その香りだけで魂を癒してくれるソウルフードを、誰の視線も気にすることなく口の中にいっぱいほおばりながら。そんなふうに私たちは家の中で再び外の戦場に出るパワーを蓄え、使い切ったバッテリーを充電し、人生の歯車を回し続けられるようにする。
と書いていて、本当にその通りだなと。
持たざるものがどんなに頑張っても搾取され続ける社会構造、日本はどんなことになっているのだろうか。
本書の訳者解説に名前が上がっていた『貧困世代 ─社会の監獄に閉じ込められた若者たち』も読んでみたい。
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