パスプアの短編演劇集『きをみずもりをみる』をカタリナスタジオで。
短編3作ダンス1作という構成です。
最後に上演された短編『ハッピーエンドセンター』は、映画『PLAN75』を彷彿とさせる(年齢に関わらず)生死の選択権を与える制度が施行された日本社会が舞台。
このことについて、特に彼らのメイン客層である(と私は思うのだけど)若い観客と問いを共有したいという意志を感じさせる作品でした。
もちろん私自身にとっても他人事ではないのだけど。
コスパ重視で「幸せになれないと思うなら死んだらいいじゃん」と(形だけの)友人にあっさり言えてしまうAは、いかに少ない労力で成果としての(勝ち組的な)人生を得るかを最重要視しており、生きる意味がないと思ったら死を選べる制度も歓迎しています。
そんなAに対して、「Aって、道徳の授業とか政府の言ってることを真に受けるタイプ?もっと頭のいい人かと思ってた」と友人が言い放つセリフには、作者の静かな怒りを感じたりもしつつ。
Aは、友人からの言葉や、死を自ら選択したはずなのに死の間際に「死にたくない」とつぶやいた人のことを考えるうちに、価値観が揺らいで自分がこなしてきたことに耐えられなくなったのだと思うのだけど、
そうやって今度は自分が自死のサービスを受けようとしたとき、死のうとするのを止める人たちに対して「役に立つ人間だと死ぬのを止めるんですね」と言う彼女を見て、
あまりにコスパ思考や「生産性が全て」という考えに毒されてしまうと、他者の善意や「生きていてほしい」という思いまでが、「それって要するに自分が役に立つからですよね?」というところへ矮小化されてしまうんだな、と。
死の間際に彼女が発する「死にたくない」という言葉から感じられる、「社会からのメッセージと生への希求が相反してしまうこと」の悲惨さが辛かったな…。
コスパ思考や生産性重視な考え方は、自分も含め、どんな人でも大なり小なり絡めとられていると思うから、本当に気をつけないといけないなあ。
あと向井章人さん振付・指導によるダンス作品ではパスプアの俳優が踊るのですが、私は彼らの身体にこれまで観てきた彼らの作品の人物が入り乱れて重なるため、語られなかった物語が立ち上がる不思議な感覚があり、そこに俳優が踊ることの面白みを感じた次第。
『PLAN75』も観たくなりました。
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