読んだ本。イリナ・グリゴレ『優しい地獄』

イリナ・グリゴレさんはルーマニア出身で、現在は日本在住。上の出版社ページから以下引用すると

社会主義政権下のルーマニアに生まれたイリナ。
祖父母との村での暮らしは民話の世界そのもので、町では父母が労働者として暮らす。

川端康成『雪国』や中村勘三郎の歌舞伎などに魅せられ、留学生として来日。
いまは人類学者として、弘前に暮らす。

日々の暮らし、子どもの頃の出来事、映画の断片、詩、アート、人類学……。
時間や場所、記憶や夢を行ったり来たりしながらつづる自伝的なエッセイ。

とのことで、「本書は、社会にうまく適応できない孤独な少女の記録であり、社会主義から資本主義へ移っていくルーマニアの家族三代にわたる現代史でもある」と。

ルーマニアは、シビウ国際演劇祭のボランティアプログラムに参加したことを機に革命時のことなどを勉強して、歴史としては知っていたのだけど、

実際に当時の社会を生きた人にとってはどんな日々だったのか、ということを本書で知りました。

特に「優しい地獄 下」という回で、田中泯さんの舞踊団に入っていた時代に、元社会主義国からきた一員として壮絶なシーンをつくった際、泯さんから「最後に立って笑うのよ」と言われたエピソード。

この前に読んだ『天使たちの都市』や、他の小説で描かれる人たちのことともリンクして、次にまた別の文学に触れた際に違う見方をできそうだと思ったのでした。

ちなみにイリナさんが2008年のシビウ国際演劇祭でボランティアをしたときの体験も書かれていて、その光景をリアルに想像できるのがちょっと嬉しい。

※彼女が担当した故・中村勘三郎氏率いる平成中村座による歌舞伎公演『夏祭浪花鑑』の招聘について、総監督のキリアック氏が語っている記事はこちら

話戻り、

エッセイの中で書かれる、世界に対する彼女独特の感受の仕方に読書中ずっと触れていたせいか、合間に観た演劇でいつもと違う感受の仕方を自分もしたような気がした次第。

かつ

お山暮らしのおかげでより共感できる部分もあったし、一度読んでハッとした部分をもう一度手繰り寄せたい気もするので、改めて買いなおそうかな。手元に置いておきたい一冊でした。

(編)

 

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