すっかり間が空いてしまいました。GWが明けてからは夜も勉強時間に当てていたので、見たものといえばタイトルに挙げている二つのみ!

エメラルド・フェネル監督『プロミシング・ヤング・ウーマン』@アマプラ

辛い…。

今を生きる身としての救いを挙げるなら、少しずつこの作品中の女性を苦しめた価値観がおかしいってことを声に出せるようになったこと…かな。状況が劇的に改善されたとは全然思わないけど、少しずつはマシになっていると思いたい。

次、二つ目。

村川拓也『ムーンライト』@クリエイティブスタジオ

ドキュメンタリーやフィールドワークの手法で作品を発表し続ける村川拓也による、過ぎ去った時間を現在に立ち上がらせる名作を、主人公「不在」で異例の上演。見えない人やモノの存在を観客と共に想起する「演劇」を試みる。

という本作。村川さんとの対話とピアノの発表会の形式をとった本作の主人公は、ベートーヴェンの「月光」に惹かれてピアノを始めた、70代の男性・中島昭夫さん。目の病が悪化して晩年はほとんど見えなくなっていた彼は、2018年の初演、20年の再演後、21年秋に亡くなったのだそうです。

舞台上にはグランドピアノと、中島さん不在の椅子、そして村川さんが近くに座り、過去の上演同様インタビューが始まります。

視力がある自分からすると中島さんの姿は見えないけれど、目をつぶってしまえば「不在」は闇に溶けて消えてしまうし

村川さんの質問に対する答えも返ってこないけれど、耳の不自由な人からすればこの「沈黙」がデフォルトだし

そう思うと、

自分の想像力と、舞台で伴走する村川さんの助けを借りて、自分だけの『ムーンライト』という作品を脳裏に出現させることができるような感覚に。

そうやって、中島さんの人生の断片と、自分と、演奏者や観客の「今」が重なった時間を体験し、なんとも不思議な断片が自分の人生に加わったことを思ったのでした。

村川さんの作品、ずっと観てみたいと思いながら、なかなか過去に遠出していたときにタイミングが合わなかったので、札幌で観ることができて嬉しい。

ちなみに冒頭で書いたように、GWが明けてからはまとまった時間が必要な映画や演劇作品は観れていなかったけれど、寝る前に10分ほどアルフィアン・サアットの短編集『マレー素描集』を読んでいました。

見開きで終わるエピソードもあって、そういう短いエピソードだと5分くらいの読書時間で異国へポーンと飛んでいけるのがすごく良い。

そうやって心を今自分がいる場所から遠くに飛ばして1日を終えるってのが、自分的にすごく大事。であると同時に、それができることの贅沢さと、それを可能にしてくれる芸術の存在にもありがたさを感じるな。

本書はまだ半分くらいなので、まだまだ楽しめそう。読み終わったらまた外国作家の短編集を探したい。

(編)

 

 

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