まずは読んだ本。『グローバル・パーティーサーキットの社会学』
社会的流動性のない時代に、社会の上流へ移動したい男性は「美しく若い女の子(モデル体型必須)」を使う。なぜかというと、有り余るお金を手にする世のほんの数%の男性は、自身のステータスを誇示するためだけに「美しく若い女性」を必要とするから。
で、その需要に応えれば高額の報酬と、そのシーンにおける重要人物として見なされるという、ちょっとした階級移動(幻想なのだけど)気分も味わえる。
ということで、VIPパーティーに「美しく若い女の子(モデル体型必須)」を提供するプロモーターと呼ばれる男性たちに、2年ほど密着取材して書かれたのが本書。
モデルビジネスのブラックっぷりにも少し触れられていて、なかなか…。
自分の価値が外部要因(どこに属しているかとか、誰と付き合って、どのぐらいのフォロワーがいて、どこに暮らして何を着ていて、どんな場所へ出入りしているか)によって上がることは、どんな人にも大なり小なりあると思うんだけど、
自分の価値は自分がきちんと自分の内部に見出していないといけなくて、その過程で外部要因はなるべく必要としない方が、最終的に精神的に健やかに生きていける気がする。
しかし華やかな場所は、見た目も含め外部要因が露骨に影響するので、近づかないのが一番じゃないかと…。
続いて、見た映画。
ザザ・ウルシャゼ監督『みかんの丘』
と
ギオルギ・オヴァシュヴィリ監督『とうもろこしの島』
どちらも、コーカサス地域に位置するジョージアと、ジョージアに属する自治共和国アブハジアとの間で1992年に勃発した紛争を扱った作品。
コーカサスといえば、チェチェン紛争だったりナゴルノ・カラバフ紛争だったりをニュースで見かけつつ、自分的に歴史背景が未知の地域だったりするので、この機会にジョージアとアブハジアのことが少しわかって良かったな。
『みかんの丘』は、紛争が起こる前は役者をしていた志願兵と、アブハジアに合流したチェチェンからの義勇軍兵士が、ともに負傷し、みかん箱を作る職人の家で介抱される過程で敵対心が薄れ、
肉体の怪我も、一人の人間として相手を見るという大事な根源のようなものも回復しかけた矢先に、まさに「不条理」と言えるような出来事が降りかかる話。
ものすごく辛い…。しかし現実にはもっと悲惨なことが起こっているという…。
『とうもろこしの島』では、そこまであからさまに戦争そのものは出てこなくて、しかし大自然を前に一瞬でかき消されてしまう人間の営みが描かれており、これはこれで辛い…。
でもこうやって洗い流された土地に、人がまたやってきて、小屋を建て、土を耕し、種を蒔き、生きる糧を得てきたのだ。という力強さも感じる。
「ここは誰の土地なの?」と聞く孫娘に対して、「耕した者の土地だ」と言うおじいちゃんの答えは、領土問題に巻き込まれる地域の住人からすればまさに…。と思う反面、
それは、北海道には当てはまらないなー。とも思った次第。
おじいちゃんのとうもろこし栽培は、小屋を建てるところからアナログ作業で、見ていて楽しかったです。セリフが極端に少ない映画だけど、このアナログ作業を眺めているだけで満足感ありました。
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