読み終わった本、まずは一冊目。
永吉希久子『移民と日本社会 データで読み解く実態と将来像』
少子高齢化による労働力不足や排外主義の台頭もあり、移民は日本の大きな課題となっている。本書は、感情論を排し、統計を用いた計量分析で移民を論じる。たとえば「日本に住む外国人の増加により犯罪が増える」と考える人は6割を超えるが、データはその印象を覆す。こうした実証的な観点から、経済、労働、社会保障、そして統合のあり方までを展望。移民受け入れのあり方を通して、日本社会の特質と今後を浮き彫りにする。
とあるように、この本で取り上げられているさまざまな調査研究の結果をもとに、自分の意見を組み立てていける貴重な一冊。
例えば、
マイノリティに対する感情の悪化は、移民の増加や人口構成の変化そのものによって生じるとは言えず、より重要なのは「そうした変化をどのように表象し」、「それを人々がどう認識するか」ということであると。
特にメディアに関わる人たちの注意深さや勉強が必要な部分じゃないかと思うのだけど、どうなんだろう…。新聞はまだあれとしても、テレビとか…(テレビがない生活●十年、かつネットテレビとかにも疎いのでなんともですが)全然その辺期待できなさそう。
また、
制度には象徴的な機能があり、国籍制度や移民統合政策は「国民とは誰か」、「移民は社会にとってどのような存在か」、「移民と受け入れ社会住民との関係はどのようであるべきか」などについて、暗黙のメッセージを発している。
という部分も激しく同意。結局、元々の制度や社会構造自体に問題があるのに、あたかもそれを「移民」(「難民」も)という人たちに問題があるかのように語られることが問題なんだよなー。
日本の労働環境なんて外国人だけじゃなく日本人にとっても魅力的じゃないし、1年毎の更新でもどうなのって感じの派遣で最近は半年ごとの延長みたいな、全く安定性を無視した使い捨て条件をシャーシャーと掲げるところもあって、そんなことやってたら優秀な人はどんどん外を目指すし、ましてや高技能人材だってやってこんわ…とため息。
移民に目を向けて、どんな社会が望ましい形なのかを考えることは、すなわちそれ以外の社会制度や日本の現状にも目を向けることにつながるので、この辺は今後も少しずつ情報を更新して、自分の考えを組み立てていきたいな。
それにしても
日本人として日本で暮らしているとほとんど触れる機会がない「在留資格」のように、移民というフレームを通すことで、今自分のいる場所が全然知らない制度や視点にあふれていることが見えてきて、頭がグルングルンします。
ちなみに本書ではもちろん難民のことも取り上げられていて、日本の難民認定制度にも問題ありまくりだと思うのですが、ウクライナ危機をきっかけに要・見直しということになるのだろうか。なればいいのに。
ということで、二冊目はこちらを。
緒方貞子『私の仕事 国連難民高等弁務官の10年と平和の構築』。
これについては次に書きまーす。
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