アメリカ人映像作家マーロン・リグスによるドキュメンタリー『Tongues Untied/タンズ・アンタイド』が無料配信されていたので、拝見。
本作の日本語字幕制作を手がけたスタッフによる紹介記事がこちら。
i-Dでの考察文も非常に参考になりました。i-Dから以下引用。
1985年から86年頃の彼らにとって、黒人かつゲイというアイデンティティを表現する主要な表現手段は詩であり、そこではあらゆる形式や表現が用いられていた。リグスは黒人ゲイの声が表現された詩やショートストーリー、実験的なエッセイが収められたアンソロジーに次々と目を通し、これらの詩人たちに関する作品を作ることを思いつく。そして、詩の映像化という困難な課題に、ありったけのクリエイティビティを注いでいった。
他にも、「スナップ」(体の前で腕をしなり指を鳴らす仕草)とか初めて知ったなー。
発せられる詩の言葉が強くて、没入とはまたちょっと違う感覚で、じっと見入ってしまった。
次、
やっとこさ読み終えた本はマイケル・サンデル『実力も運のうち 能力主義は正義か?』
出版元の早川書房によるこのトークも抜群に面白かったっす。
で、本書。(試し読みはこちらから)
「容認されている最後の偏見」である学歴偏重主義について、自分は一応大学を出つつ、でもアカデミックな専門性は特に持たない身なので「功績」からは距離がありつつ、でもやんわりと「大卒」という恩恵には預かっている、みたいな中途半端な立ち位置なのですが。
中途半端なだけに、逆に「これは自分で成し遂げた」ということより「運に恵まれた」感の方が自分の中には多いかも。
ちなみに、「2000年代になると、アメリカや西欧では、選挙で選ばれる公職から大学の学位を持たない市民は締め出されていた」という記述があって、イギリスの労働党も79年では41%が学位を持たない議員だったのが、2017年ではその割合は16%とな。
昔は労働者階級を代表していた労働党の階級構成が、今ではそうではなく、「ロンドンのエリートの政党」となってしまったことに納得。日本はどうなんだろう?
洞察力や道徳的人格を含む政治的判断能力と、標準テストで高得点をとり、名門大学に合格する能力とは、ほとんど関係がないのだ。「最も優秀な人材」は、学歴で劣る同胞よりも優れた統治ができるという考え方は、能力主義的なおごりが生んだ神話なのである。
わかるなあ。公職だけじゃなくて、多くの職の募集要項に「大卒・短大卒」という言葉を見かけるけど、これもきっと募集する側は深く考えず書いてるだけで、実際この条件は必要ないんじゃないのかなー。
そして、第7章の「労働を承認する」は、とても大切な内容だと思いました。
上の対話の中でも「全ての人間が貢献できるものを持っているという価値観」という言葉が出てきて、それにホロリとしてしまったのですが、
多分それは、自分の中にも功績主義の序列みたいなものや、それによって無価値と判断されてしまうようなことへの恐怖みたいなことが、根深くあるからなのだと思うなあ。
まず何より自分の考え方を変えていかないといけないな。
政治に携わる人たちにも全員読んでほしいわ…。
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