ベルリン演劇祭(テアタートレッフェン)で、毎年独立した立場の審査委員会によってシーズンの約400の上演作品の中から選ばれる、注目すべき10の演出作品のうち、オンデマンド配信中の

『Automatenbüfett』を拝見。

(全編はこちらから見れます。9/12までの配信)

本作はウィーンで生まれたユダヤ人作家Anna Gmeynerの1930年代の作品。ベルリンで劇作家としての地位を確立しかけていたときに、ナチスドイツの台頭でパリへ移った作家とな。

(ちなみにWikiを見たら、彼女の最初の夫は不妊治療のパイオニアであるBertold Paul Wiesnerで、彼が三番目?の妻と運営していたロンドンの不妊治療クリニックでは60年代以降クライアントに告げずに彼の精子を提供しており、少なくとも600人以上の生物学的父親であることが判明したという…トンデモな人物でした。)

アマチュア漁師協会的な団体のメンバーで、池で鯉?を養殖し、廃れた町の産業にしようと提案しているアダムは、ある日池で自殺しようとしていた若くて美しいエヴァを救い、妻の営む食事が全て自動販売機に入ったレストラン「自動販売機ビュッフェ」へ連れて帰ります。

そのレストランの常連には町の有力者の男性が何人かいて、アダムは、魅力的なエヴァを使って彼らをたらしこみ、自分の提案を通そうと画策。ほとんど成功しかけたときに、その男性たちの妻の反抗か何かでポシャり、レストランを運営していた妻もその店のスタッフ男性(悪いやつ)にそそのかされて店の権利をスタッフに譲り「自分を愛してくれる彼と生きていくわ」とアダムと離婚。

最後、池で自殺しようとしていたアダムに今度はエヴァが寄り添い…的な話だったのだけど、この自動販売機レストランって、19世紀末ベルリンに「Automat」が登場して人気を博していたそうで、それがアメリカに渡り、60年代には日本にも登場。

で、90年代以降はすっかり廃れた形態だったのが、コロナ禍で非接触型の店舗形態として再び盛り上がっているという…すごいな!

本作は、現地ではAnna Gmeynerという作家の再発見的な意味合いで受け止められつつ、書かれた当時の男女の力関係の移ろいに対する考察や、自動販売機レストランという超合理化の最先端を行くレストランを運営するオラオラ系の妻が、結果お客さんや夫アダムとのコミュニケーションを失い、その孤独のせいで悪い男に騙されるというところが自分的に響いた次第。

お店常駐のピアニストですら、お金を投入しないと一曲弾いてくれませんからねえ。義理人情から解放された清々しさと、それが行き過ぎると温かみが全くない機械的な関係しか持てないあたりが悩ましいなと、しみじみ。

舞台美術もクール。

オートレストラン、今後どうなるんでしょうかね。

(編)

 

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