続いて二冊目。

高橋繁行『土葬の村』

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いやー、これまた抜群に面白かった…。映画なんかで野辺送りのシーンがチラリと出てくることはあっても、その詳細についてあまりよくわかっていなかったのだけど、あれは土葬の葬列だったのかー。

北海道という島の札幌という大きな都市に育った77年生まれの自分からすると、日本のその他の島々(の村とか)の大部分が別世界というか、ほとんど知らないに等しいんだなーとしみじみ。

火葬率ほぼ100%の日本でも、つい最近土葬を行なった村はあるし、イスラム教の人たちは土葬なので、日本でも土葬できる霊園はあるのですね。北海道だとよいち霊園とか。

あとアイヌの人たちにとっても土葬が本来の形で、現在はほとんど行われなくなっているけれど、2019年に行われたというNHKの記事も発見。「自治体によっては土葬を禁じているところもありますが、新ひだか町では土葬は可能」なのだそうです。

あと、「土葬の会」なるものがあることも初めて知りました。

土葬を続けてきた共同体に属していない人の中にも、土葬されたいと願う人たちがいるんだなー。

ちなみに野辺送りは、町の葬儀会館で葬式をすることに比べてはるかに手間がかかるのだけど、土葬をしている地区の住職は「九十歳で亡くなったおばあさんは、例えば二十歳で嫁入りしてきて、七十年間田んぼや畑を耕し村のつきあいをしてきたんです。葬儀会館のお葬式は、それをある日、一瞬で送るわけです。私はそれにどうしてもなじめません。みんなで”ムダ”をいっぱいして故人を送ることが供養になるのです。」と語り。

その言葉にストンと納得。

逆に、そういう小さな共同体の中で土地と向き合いながら生きてきた人以外の、都市で他者とそれほど関わることなく生きてきた自分的には、パッと焼いてしまう火葬がよりしっくりくるというか。

ちなみに、北海道の土葬状況はどんな感じだったのかなーとチラリと調べてみたら、「北海道の移住文化からみる葬送儀礼の構築」なるコラムが。へー。ちなみにこのコラムは2013年のもので、同じ学芸員さんの2015年の研究報告も発見。へー。

札幌はどんな感じで変遷していったのだろう?と思って検索してみたけれど、WEB上で見つけるのは難しそう。明治期の札幌の墓制についての論文の参考文献に出てきた『札幌市墓地・火葬場の沿革』(札幌市公文書館所蔵)あたりを読むとわかるのかな。

札幌市の火葬場・墓地のあり方基本構想」も発見したのでざっと読んでみたのですが、札幌でも、市民アンケート調査などで樹木葬や合葬などの自然葬、散骨を望む声が高まっているのですね。

(「北海道の散骨業者一覧&お勧め」というサイトも発見。散骨かー。)

私は葬式いらず、死んだらパパッと火葬して骨は自宅裏のお山(自分たちの所有する土地部分)のどこかに埋めてもらえればいいのだけど、私有地に埋めるのってありなのかな??家主にも希望を聞いてみたら、自分と全く同意見。

自分の所有する土地に埋めるのが難しいのなら、散骨か自然葬かなあ。でも第一希望はお山だな。

あ、『土葬の村』に話戻り。

自分的にグッときたのは「ウブメの子渡し」についてのところで、全国的に広く流布した胎児分離の風習が死体損壊罪に問われるという現実の事件に発生した例に関するところ。

検事と民俗学者が昔話と伝説の民俗学的な検討をし、胎児分離が死体損壊罪に相当するかどうか語り合った結果、後日民俗学者の元へ法務府から覚書が送られてきて

「かような行為は、たとえ非科学的であるとはいえ、死者の霊魂の安静を期するため一層礼意を厚くする趣旨において行われるものであることは客観的に明白であって、(中略)違法性を欠き犯罪の成立を阻却するものである。勿論、これは奨励すべき行為ではないが法の干渉外に放任すべき行為であると思う」

と結論されていたそうな。

「勿論、これは奨励すべき行為ではないが法の干渉外に放任すべき行為であると思う」という部分を読んだとき、なぜか泣きそうになりました…。

『土葬の村』、おすすめ!ぜひ!

と、突然終わる。

(編)

 

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