2日間くらいかけて、あれこれ調べたり、何度も見直したりして、のんびりと『This House』(作:James Graham、演出:Jeremy Herrin、2012年初演)を。

イギリスにおける1974年のハング・パーラメント(どの政党も議席の単独過半数を獲得していない状態)で、労働党の少数与党政権が発足(同年10月に解散・総選挙を実施し単独過半数政権となるが、野党との差は僅少)、そこから79年に内閣不信任案がわずか1票差で可決され、同年5月にサッチャー政権が発足するまでの4年半の
「Whip」と呼ばれる各党の院内幹事たちのドラマを描いた作品。
国立国会図書館の「イギリスの議会制度」という資料を見ると、Whipとは

・主な任務は、党の規律の維持*2、フロントベンチ議員とバックベンチ議員の意思疎通の確保、審 議日程等に関する他党の院内幹事との交渉等である。
・与野党の院内幹事長間の非公式協議により委員会における各法律案の審査時間の割当て、委員長 ポストの配分等、審議に関する様々な事項を決定する。

とあって、日本だと国会対策委員会がそれにあたるのかな?
他党とのパイプや交渉力が重要な役職でありながら、国民サイドからはほとんど日の目が当たらない地味で無名な人たちをメインに据えた話だけど、かえってそのおかげで、敵対する立場ではあるけれどもお互いに敬意を持ち、それぞれの仕事を全うしようとする副幹事のジャック(保守党)とウォルター(労働党)の友情や、登場する議員のキャラクターや志がキラリと光って、グッとくる。
フェミニストで、社会的弱者のために戦う労働党のAudrey Wiseとか、党の方針に反しても自分の信念を貫くあたり、問題児扱いだったけど良かったなー。(それにしても、この4年半の間に労働党の議員さんが17名も亡くなるという驚き!)
加えて、イングランドの地域(選挙区)ネタ(地域名、都市名の「チェ」の響きの良さを語る議員のレディッチディスり)とか、イギリスと北アイルランド、スコットランド、ウェールズとの歴史(当時交渉カードだった権限委譲についてとか)、
このセリフいいなー!って一言(サヴィル・ロウのテイラーを親に持つジャックが、与党となった労働党Whipの一人から「スーツのここが綻びているので直してくれない?」とけしかけられた時、「ごめん、化繊のスーツは扱わないんだよね」と返すところがやたらと好き)が随所に。
自分にはよく意味がわからないけど観客席からは笑いが起こっているシーンとかも結構あって、(共同体の記憶を垣間見た感じがするので、そういう瞬間が好き。)豊かな2時間半でした。
キャストによる解説と

James Grahamによる解説も。

Gardianのインタビュー記事はこちら。
あと、観劇時の確認用としてありがたかったこちらのまとめも。
他国の政治劇を通して、自国のことを調べるきっかけにもなるのが良い。「国会対策委員会」とか、初めて検索した私…。
日本版も見てみたいですねえ。日本版を作るとしたら、どの時期が良いのかな。93年の8党連立の細川内閣からの94年自社さ連立村山内閣あたりとか…。ゴチャゴチャしてそうだし…。
あとはー
英国ロイヤル・バレエの『ザ・チェリスト』も見ました。

42歳という若さでこの世を去ったイギリスの天才チェリスト、ジャクリーヌ・デュプレの生涯をテーマにした作品。
こちらの記事によると、クラシック・バレエにおける女性振付家の数は圧倒的に少ないそうで、

だからこそ、在学中に振付コンクールで入賞して頭角を現し、2002〜07年にロイヤル・オペラハウスのアソシエイト・アーティストとして小劇場で13の小作品を発表したマーストンが、45歳にしてようやくメインステージで物語バレエを発表できたことは、ロイヤル・バレエにおける歴史的な出来事と言っていいだろう。

とのこと。へ〜。
こちらはフルバージョン。

私はたまたま副音声付きの方を見て、それもまた新鮮でした。
動きや場面を随時言葉で描写していくって、すごいなあ。目の見えない人には、音楽と副音声から、頭の中にどんな踊りが立ち上がるんだろう。
『ザ・チェリスト』、美しかったです。
(編)

 

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