進藤冬華『移住の子』を、モエレ沼公園 ガラスのピラミッドで見てきました。
これ、とても面白かったのです。
特に、最初にこの《ケプロンと私の日誌 1871-1875 and 2018-2019》を読んだのが良かったのかも。
ケプロンが滞在した1871-1875の日誌(これのことかな?読んでみたい)に、冬華さんの日誌を合わせたもので、
約150年前の、アメリカ人の、北海道や東京での時間と、冬華さんの今の時間が並列してあることの、新鮮な面白さがあったというか。
そして、自宅の庭で開拓にまつわるさまざまな活動(畑や水路を作る)を再現し、(解説文では「開拓される土地のジオラマを作る」と書かれていた)
ケプロンが通りかかったであろう場所や、昔の風景を追って、自転車で散策したりしながら
自身の身体に「歴史を見るための自分だけの軸」を形成していったのではないかと。そして、その軸は本人にしか知覚できないものだからこそ、自分もその軸を作らないといけないなと思わされるんですよね。
そう思った時に、「歴史を見るための自分だけの軸」を作るためのプロセスとして、冬華さんの行為はすごく興味深い。「こんな方法があったか!」みたいな。
(少しずれるけど、鑑賞後NYで聖書の教えを忠実に守ってみた1年を綴った『聖書男』を思い出しました。8年間積ん読している一冊…)
それに加えて、《想像上のレプリカ》とか《ケプロンと黒田の像 -ピクルス》など、「ふっ」てなる造形的な想像力の飛躍もあったりして、見応えありの展覧会。
《フリの記録 -コラージュ》も、日誌や自身の身体を通して起こったであろう過去と現在の混じる感覚が、鶏卵紙写真によるコラージュという手法で視覚化されていて、面白かったなー。
それにしても、やっぱり、自分的には
「誰かの生きた時間と、自分が今生きている時間を、重ね合せる」という行為が、そうすることでしかできない発見をもたらすような気がして、興味津々です。
5年前から10年日記をつけていて、過去の自分と今の自分を重ね合せる行為の面白さは実感しているけれど、同じことを時間も国籍も場所も異なる人と重ねるって、どんなんなんだろう?
※北海道美術ネット別館でも本展について書かれてました。展覧会の挨拶文や作家本人のステイトメントなども掲載されていますので、こちらも合わせてどうぞ。
※8/26追記:今日冬華さんと話してて、日誌の話をしたら、表にすることで「(ケプロンさんは)毎年誕生日を祝ってるんだなー」とか「(ケプロンさんは)クリスマスに同じ人といるなー」という発見があったことを教えてもらって(展示拝見時に見落としてた面白ポイントじゃないですか…)、そおいうことは博物館とかの開拓史には絶対紹介されないことだと思うんだけど、この、歴史に対する「個人的な」「自分の足元からの」接近(身体的なアプローチを伴う)というのが、冬華さんの面白いところなのかも。
そう考えると、「個人的な」ものである手芸や手仕事を習うという身体的アプローチによって制作していた、以前の一連の作品群も、今思うと近代化に伴う女性史、みたいなことに接近していたのかな。(この本を読んだ時のことが下敷きになってます)
ちょっとぐるぐるしてきたので、とりあえずこの辺で終了。冬華さん作品に対する学芸員の方の考察を読んでみたーい。
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