先日、高橋喜代史「1つの言葉、3つの文字」のトークへお邪魔してきました。
本展の出発点となっている難民問題については、以前パトリック・キングズレー『シリア難民』を読んだ時にも書きましたが
当初メディアは基本的にボートでヨーロッパにやってくる人々を「移民(migrant)」と呼んでおり、本来「移民」は、理由に関わらず一つの国から別の国にやってくる人を意味する、ごく中立的な表現であったと。
ところが、次第に「移民」という言葉をネガティブな意味合いで使うメディアが出現。(経済移民とか)
そのため、批判的なニュアンスが少ない「難民(refugee)」を使う動きが高まったそうなのですね。
ただ著者としては、中長期的には「難民」という言葉を使うことにマイナスの影響も考えられるため、いずれ「移民」という言葉が再び中立的な意味で使われるようになることを願っていると。
なぜかというと、「移民」とは複数の地点を移動する人という意味であり、移動する理由には関知しないから。
また、「難民」という表現を推進する人の多くは、難民は移民とは違うと考えており、難民には保護を受ける権利があるが移民にはなく、難民には故郷を逃れなければならない十分な理由があるが移民にはない。と考えていること。
でもこの分類法には問題があり、実際には難民と移民を見分けることは難しく、多くが両方のカテゴリーに当てはまると。そして、こうした言葉の定義の目的は、移動する権利がある人とない人の間に線を引き、移動を阻止するべき人を明らかにすることだ。と。
※この前後の文章にも触れると、著者が言いたいのは「人間の歴史は移住の歴史と言ってもよく、人間の移動は止めることはできない」のだから、「移動を阻止するのではなく、移動してきた人たちの管理方法を検討する方が、直面している問題の解決につながる」ということです。
※キーボーさんの「日本における難民問題」ということに照らし合わせても、また、外国人労働者政策の面からしても、なぜ今のような閉鎖的な体制ができていったのかには興味があるなあ。最近読んだ『日本の起源』に出てきた、幻想の「あるべき秩序」とかに関係しているのかな?
(話戻り)この著者の意見になるほどなあと思った経緯があったのと、
新作の映像作品についての話の中で、それなりの負荷や困難さを可視化しないと人々の助けは誘引されないのでは…といったような意見が出た時に、
「わかりやすい困難さ、目に見える困難さ」がないと助けを得る資格がない、という思い込みは自分にも根深くあることを踏まえつつ、
その考えが「移民」と「難民」を明確に線引きする根底にもあるのだろうし、例えば生活保護をはじめとする日本の福祉のあらゆるところにもそういった考えが根を張っており、それが実際の場面で「本来得られる助けを得ることができない」ことにつながってるんだなーと。
だから、「困難さ」「悲惨さ」のレベルを誰かが決めて、単純化し、助けを求める理由をレベル付すること。そこからはじかれる人は助けない、受け入れない、その姿勢そのものを問いたい。「本来得られる助けを得ることができない」状況は、絶対いつか自分にも跳ね返ってくる問題だと思ってます。
(北海道だと、公共機関のない地方在住者にとって車は必須なのに、自家用車があると生活保護を受けられないとかさ。)
そおいう意味では、新作の映像作品で、ぱっと見「助けを求めているとは思えない」キーボーさんに対して、1時間、見事に誰も声をかけてこなかったという状況は、「わかりやすい困難さ」を持たない人に対して助けの手を差し出そうとしない日本社会を表してはいるなあ、と思った次第。
あとはー
この日は、終了後のパーテイーでトークゲストの福地大輔さんとたくさん話せて、大層面白かったです。話題に出てた『ドゥ・ザ・ライト・シング』も見てみたい。
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