先週からちびちび読んでいる本。
想田和弘『熱狂なきファシズム』。
想田さんは映画監督で、以前シアターキノで上映された、平田オリザさんを追った『演劇1』『演劇2』はご覧になった方も多いのでは。
で、『熱狂なきファシズム』。
第1章「ニッポンの根拠を疑う」では、主に改憲問題について。
第2章「観察という手法」では、自ら「観察映画」と呼ぶドキュメンタリーの手法を紹介しつつ、「観察」することの本質について。
第3章「権力と表現」では、さまざまな傑作ドキュメンタリーを考察。なぜそれが、数多のドキュメンタリー作品の中から一線を越えて「傑作」となったのか。その「視点」の特殊性(というか発明具合)について。
という3章構成なのですが、
第1章のような内容だけで構成されていると思っていたので、2章以降の構成は意外で得した気分。第3章で挙がっているドキュメンタリーなんか、全て見てみたくなるもんな。
でも、何と言っても第1章で、自分的に大きな出会いが。
それは、ベアテ・シロタ・ゴードンさん。
終戦直後、GHQの民政局の一員としてマッカーサー元帥の命令を受け、日本国憲法の草案執筆を担当したメンバーの一人(彼女は当時22歳)。
と、さらりと書いてあったけど、
これ本当にびっくりしました。
憲法を誰が書いたかなんて、今まで一度も想像したことがなかったから。しかも、写真のような若い女性もメンバーに入っていたなんて。
想田さんは1999年にベアテさんのことを知って、同じように衝撃を受け、当時制作していたNHK衛星第一の番組で紹介したそうです。
※ちなみに、GENERATION TIMESによる2007年の彼女へのインタビュー記事がありました。こちらからどうぞ。(インタビュー記事によると、「若い女性が憲法草案に関わっていたことを口実に、日本国憲法の価値が失われてしまうことを懸念して、戦後ずっと口を閉ざされていた」のだそうな。へー。)
ベアテさんのことは、90年代になって、ようやく知られるようになったのですね。
GHQでの任務を終えた後はNYに住んで、ジャパン・ソサエティのパフォーミング・アーツ部門の初代ディレクターに就任。日本の一流の芸術をアメリカに紹介する仕事に従事したそうです。
憲法からパフォーミング・アーツへ、というのも素敵。こりゃ本気で憧れるなー。
『熱狂なきファシズム』の第1章では、自民党改憲案の問題点も挙げられていて、それは本当にひどいなあと思うのだけど、
と同時に、自分の生活がいかに憲法によって守られているのか、ということも感じたのでした。
「素敵な生活」を志向して自分の周囲をセンスよく飾っても、あるいはアートや何かに熱中しても、その足元が何で支えられているのかを知らないのは、虚しい。
そして、立派な素晴らしい憲法も、空気を読んで自主規制したりしていれば、保持することは難しくなるのだなあ。
高校生の頃に暗記しつつも、さっぱりピンときていなかった「国民の不断の努力」という言葉が、ようやくピンときた次第です。
ベアテさんの本も読もう。(上の写真の本)
『熱狂なきファシズム』、実に面白い本でした。刺激受けまくりました。
ぜひご一読を。
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