いつもの書き方とはちょっと異なるのですけど、公開審査会で講評を担当した作品だったので、そのときの内容をベースに多少追記したものを残しておきます。
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私は視覚イメージや音など、言葉以外の表現に触れて想像を刺激されたいタイプの観客なので、
その立場から言うと、本作はintroの過去作と比べ、一段上のレベルに達した作品だと評価しています。
特に、柔らかなひだを寄せ折り重なっていく薄い紙(トイレットペーパー)の造形で、「ノスタルジア」という心の動きを物質化して見せたシーンが秀逸でした。
事前審査会では他の方から「散文詩のような作品」「景色の作り方が美的」と言った言葉が出てきたことから、
この作品が個人の好みを超え、ある程度評価されていると感じました。
ただ、言葉以外の要素なのか言葉なのかわかりませんが、どこか一点で強く見る人に訴えてくる力は、弱かったかもしれません。
言葉?本の内容?物語?(←どう表現するのが適切なのかしら)を足場にして劇世界を味わう人たち(=観客のマジョリティ)を飲み込む強さを持った何か、にはなりきれなかったのだなと。
その一点さえ突破できれば、抽象、具象、物語性のあるなしを問わず、多くの人の心に届く作品になると思うので、今後の創作に期待します。
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自分の場合、ノスタルジアとか過去の記憶はほどほどに、わりと今にしか興味がない人間なもので、『薄暮(haku-bo)』の妹の存在が楽しかったです。
でも、あのトイレットペーパーのフワフワと折り重なってできたひだにくるまれたら、さぞや心地良いだろうなー。
そして、最後に思い切り時間と空間をぶっ飛んでいく、あの飛躍。
私は前のめりに楽しんだのですよ、この作品を。
(編)

 

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