読んだ本。まずは柄谷利恵子『移動と生存 国境を越える人々の政治学』

外国人労働者や移民・難民など,人々の流れが国境を越えて拡大する現状をどう捉えたらよいのか。女性移住ケア労働者、国際養子縁組、グローバル・エリートなどの事例を踏まえつつ、国際移動の構造と多様な動態を分析。移動の時代においてシティズンシップ概念にいかなる課題が突き付けられているかを考察する。

という一冊で、特に各国の国籍・入国管理制度の分析と「成員であっても安全な日常を得られない脆弱な立場であるなら、”難民なるもの”であると言える」という指摘に興味を引かれました。

入国管理制度は「誰が国家の成員であるか」、「将来的にどのような条件で成員としての資格を付与するのか」を決定する国籍制度と密接に関連しているけれど、

その人的境界線を引く基盤とされる成員の特質や共通の利益、構成が常に変化していく以上、人的境界線も絶えず引き直され、そのための政策や制度も絶えず正当化されていかなければならない、と。

また、移動するしないに関わらず、現代においてはどこの国家も経済不況、自然災害、病原菌などから成員を完全に守ることはできず、さらに権利を行使する条件として道徳心や自助努力を要求される昨今では、国家の保護による安全な日常は成員全員に一様に提供されるものではなく、一定の基準を満たす者の特権となっていて

そこから弾かれた、国内にいながら生命維持に必要な基本的なものが提供されない人々は、「保護を受ける国家を失った状態=難民なるもの」と言うことができ、「シティズンシップ」と「定住」と「安全な生活」のつながりが崩壊しつつある、と。

デルタ株が国内で猛威をふるったときの、自宅療養という名の「本来受けられるべき適切な医療処置を施されず自宅放置された人たち」なんて、まさにその状態だったような…。辛い。

(ちなみに「シティズンシップ」という言葉は、今ひとつ自分的に掴めない…)

あー、この辺、さらにいろいろ読んで調べていきたい。

続いて、二冊目。

イワン・クラステフ『アフター・ヨーロッパ ポピュリズムという妖怪にどう向きあうか』

著者は、ソ連解体と東欧革命を体験したブルガリア出身の政治学者。ベルリンの壁の崩壊後、国境が解放されて多数の国民が西側へ流出し、「民主的(デモクラティック)な革命として1989年に始まった出来事は、人口動態上(デモグラフィック)の反革命運動になった」と書きます。

東欧の医療制度においては十分に訓練された看護師が奪われ(賃金の低い母国の病院で専門職に従事するより、ロンドンで家政婦をした方が何倍もの収入を得ることができる)、ブルガリアの大学は能力と大志を奪われ(ブルガリアの最も優秀な学生の大多数は、国内の大学に申請しない)、さらに戻ることは魅力のない選択肢になっている。

中東欧は、以前自分的に縁ができたときに歴史を少し学んで、これまたもっと知りたいと思っている地域です。

この本(2018年発行)に書かれていることも、ロシアによるウクライナ侵略以降、またずいぶんと変化してきているのではないだろうか…。クラステフ氏も想像すらしなかったであろう、まさかの今…。どう考えても大きな転換期。

ハプスブルク帝国のことも、ちゃんと読んでみたいなー。プラス、中東欧の現代史をいろんな視点から見つめてみたい。

ちょうど先日3回目のワクチンを打った後〜翌日にかけて、副反応で机に向かう気にもならなかったので、1日じっくり読書デーにしたおかげでこの二冊を一気に読むことができました。

最近は少しずつ読み進めるスタイルが続いていたので、一気に読む体験が新鮮だったな。

(編)

 

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