川越宗一『熱源』、一気に読んでしまいました。
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明治維新後、1875年の樺太・千島交換条約で樺太がロシア領、千島列島が日本領になってからの、樺太アイヌの対雁への強制移住、からの1904年日露戦争、ポーツマス条約で南樺太が日本へ譲渡。そして1945年8月にソ連が南樺太へ侵攻。
という歴史の時間軸の中で、ロシア帝国支配下のポーランドと、皇帝暗殺を図ってサハリン(樺太)へ流刑となったポーランド人の軌跡とが絡まり合って、もおおおおおおお抜群に面白かった…。
ゴールデンカムイで下敷きが少しできていたので、イメージしやすい部分もあって良かったです。
あと、もっと知っていきたいと思ったのは、ヤヨマネクフの学校時代のエピソードで、和人の子どもと喧嘩(件の差別発言を投げられたことが理由)した翌日、屯田兵の軍曹をしているという親(長篠)が学校に来たときのこと。
「どうしてお詫びしてくれるのですか」というヤヨマネクフの質問に対して、長篠は自分が東北の大名家に仕えていた武士で、戊辰戦争で賊軍とされ、蔑まれ、食い詰めた末に屯田兵に志願し北海道へ来たこと。今日まで生き抜いて来たのは「自分たちは正しかった」という一念のみによることを話します。
そんな自分たちが正しくないことをしたならば、それこそまさしく賊となり、戦で死んだ数多の朋輩たちのためにもそれだけはしてはならない。生き残った自分たちの責務として、正しさを証し続けるために詫びに来たと言うのですね。
で、ヤヨマネクフの先生は薩摩の人間なので、「西南戦争の際の奥羽の方々の太刀の利きことは、よく覚えている」と長篠に言い、それに対して長篠は「オノゾミダバ、マダイヅデモ」と言い捨てて帰っていくという…。
すっごいな…!
幕末のあたりの歴史が完全に頭に入ったら、このシーンに凝縮されたいろいろをもっと感受できるのだろうなあ。
さらに、対雁村に西郷従道のご一行が視察に来たときの、一員だった鹿児島出身の永山准大佐(永山武四郎)が従道と鹿児島弁で話すシーンも、すごく印象的で。
永山武四郎、むちゃくちゃ嫌な奴だけど、従道に「ミウチンイサケワ、モウヤメヤンセ(身内で争うのはもうよそう)」と言われてからの、男泣きしながら吐露する内容がまた…幕末のいろんな人たちの物語をもっと知らないといけないな、と思わせられる内容で。
ここの鹿児島弁は、わからないながらに、つい朗読してしまった。声に出すと、鹿児島弁のリズムに心情が凝縮されているようで、グッときたなあ。
この時期、この土地で生きていた人たちの抱えていたものの、なんと複雑なことか。和人、アイヌという大きな括りでとどまっていると絶対見えてこない、いろいろな人たちの背負うものに触れて、私にはいろんな流れを追った物語がもっと必要だと、しみじみ思いました。
ちなみに、先のやり取りに続くのが、以下の一文で。

チコロビーが東京で見た幻想。そのなかで当の和人たちも、足掻いている。大の大人が怒鳴り散らし、泣くくらいに。その幻想は長篠氏や道守先生、永山准大佐などのばらばらだった和人たちを一つにし、日本という旗を立て、北海道のアイヌたちを呑み込み、樺太のアイヌを故郷から連れ出している。

国家というものと、幻想。
幻想かあ。
本作では1945年8月までが描かれているので、先日見た劇団チョコレートケーキ『帰還不能点』のことなども思い出しながら読みました。
読み終えてから数日経っているのだけど、何だかまだ物語の世界を漂っているような感覚です。
むちゃくちゃおすすめ。
(編)

 

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