『Small Island』をNational Theatre homeで。

原作はアンドレア・レヴィ。1948年6月22日、エンパイア・ウィンドラッシュ号でイギリスに入港したジャマイカからの移民(通称、ウィンドラッシュ世代と呼ばれる人たち)の第二世代にあたる作家です。
「ウィンドラッシュ世代」とアンドレア・レヴィについては、こちらの論考がとても参考になるのでぜひ。

1948年、英連邦市民にイギリスでの居住と労働の権利が与えられ、高額の乗船チケットを購入できる金銭力のある人たちが誇らしい気持ちを胸に新天地にやってきて、突きつけられる現実がきつい。
当初イギリスへ渡るためだけにギルバートと結婚したホーテンスは、半年後?に呼び寄せられてギルバートの部屋に到着以降、思い描いていたロンドンの生活と現実の落差に戸惑いと苛立ちが隠せず、恋愛結婚したわけでないギルバートにも不満をぶつけるのですが。
ギルバート自身もイギリス空軍に入隊したときから差別や待遇の悪さに苦しめられているのですが、決して卑屈にならず、ホーキンスのことも守ろうとするんですよね。ギルバート、いい人や。
差別的態度をとる帰還兵で大家さんの夫に対しても毅然と向き合い、そのギルバートの姿に尊厳を感じたホーキンスがやっとギルバートに心を開くラストもグッときたなー。
そして日本も、植民地期にたくさんの朝鮮人が渡ってきて、にもかかわらず、とても不安定な法的地位に置かれ差別を受けてきた経緯があり。この辺の物語もいろいろ読みたい。
※ちなみにテッサ・モーリス=スズキ氏による、脱北帰国者、北朝鮮への在日朝鮮人の集団移住(帰国事業)、植民地期から解放後にかけての日本への朝鮮人の移住、という「三つの旅路」について書かれた論考を発見。脱北帰国者のことは初めて知ったような。
二つ目は、南アフリカのケープタウン大学で演劇を学ぶ学生が制作した『The Fall』。

2015年に同大学で植民地政治家セシル・ローズの銅像が撤去され(RodesMustFall ムーヴメント)、それを契機に授業料値上げ反対(FeesMustFall ムーヴメント)と大学で働くスタッフの雇用条件改善を求める運動が全国的に広がっていくのですが、実際にそれらに活動家として参加した学生たちが書き上げた作品。
大学側との交渉にあたる代表者たちの話し合いを通して、人種差別、家父長制に根ざした性差別、さらにそこから弾かれるセクシャル・マイノリティ、肌の黒さのレベルで生じる特権、「アフリカ人」のアイデンティティみたいなところがあぶり出され、議論はたびたび紛糾。
さらに、政府と大学との交渉手段として大学の授業全面中止を要求するメンバーに対して、あるメンバーは医療学部の学生だけでも学年末試験を受けさせてほしいと訴えます。なぜかというと、アフリカでは医療従事者が不足しており、自分たちの卒業が遅れれば医療現場の人手不足は改善されず、その影響を受けるのは病に苦しむ人たちだから。
個人的に、このときの議論が興味深かったです。「システムを改善するために戦ってきたのに、学年末試験というシステムには追従するのか」とか、「自分は病に苦しむ人たちを救うために勉強してきたのだから、政治運動のためにその人たちを犠牲にはできない」とか、「大きなことを成し遂げるためには、誰かの犠牲が必要だ」とか。
これ結局どうなったのかな。交渉カードを使っても生き残れるのは、結局その人が強者だからであり、その陰では弱者が犠牲になる、みたいなこと、あるんだろうな。
あとネルソン・マンデラのレガシーに関して、国内ではどういった受け止め方をされているのかも、世代間ギャップがあるような雰囲気。この辺、もう少し今後触れていきたいなー。
この2作品は、見るのにも時間がかかったけど、書くのにも時間がかかってしまいました。
(編)
 
 
 
 
 

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