先日、トーク「Mouraiについて」を聞きに行ったときに会場でお会いした浅沼さんにお誘いいただき、浅沼さんが聞き手を務めるトーク「場と写真: 露口啓二に訊く」へ。
露口さんトークチラシ_黒_outline_a4
3時間休憩なしのぶっ通しトークでしたが、淡々とした語り口でクールに知的に露口さんの写真に切り込んでいく浅沼さんと、それに対する露口さんの応答が抜群に面白かったので、以下、振り返り。
今回は記録のためのトークということで、なんと1981年に駅裏8号倉庫で発表した露口さん初の個展「触物記」から紹介されていて、新鮮でした。貴重!
モノクロからカラーの写真に移行した初期の頃の、スナップ写真や工業地帯を撮ったものなどが続き、話題は99年から撮影開始した《地名》へ。
その頃に北海道新聞の連載『地名の記憶』で写真を担当されていたこととか、初めて知りました(文章は梁井さん)。この連載が「地名」という切り口で写真を撮る最初だったそうで、それをカラー化したのが《地名》シリーズなのだそうです。
ここで話題に出ていた高梨豊さんの『地名論』や、「風景論」の話題のところで出ていた「永山則夫が流浪した足跡を忠実に追い、永山の見たであろう風景を丹念にカメラに収めた」という映画『略称連続射殺魔』も気になる…。「松田政男」で検索したら『風景の死滅』という本とか出てきて読んでみたい。
そのあとも、2004年に撮影を開始した《ミズノチズ》、2007年に撮影を開始した《On_沙流川》と続き。
《On_沙流川》のところでは、「沢に入るとある程度外のことが遮断されて、それは普段使っていない建築物の中に入っていく感覚に近い」と話していて、音や湿気、水などから感覚を働かせて撮影場所を決め、(地面に?)適当にカメラを支えて意識の向かう方にシャッターを切るという、「視覚からいかに逃げられるか」試した作品とのこと。
初めて見ましたが、私、このシリーズ好きだなあ。人間の知識とは別の動物的な感覚を使い、人間の視点とは別の位置から撮られた写真に映る風景が、私にはとても新鮮で、人間じゃない生き物にとっての世界を感じさせるものだったのでした。
そして、2010年から構想、撮影を開始した《自然史》の話題に。
ここで、あるエピソードが紹介された時、それを聞いていた私はちょっと動揺したのです。多分私が聞き手だったら何も言えなくなってしまっていたと思うのだけど、
それを受けて「遭遇した、という、ある種それも痕跡なのですが、撮れてしまったもの、見えてしまったものであり、見る人を想定した写真とは違いますよね」と応答できる浅沼さんは本当にすごいなあと思ったし、高い専門性を持つ人との対話は重要だなあとしみじみ。
あと、浅沼さんが最後の方で話されていた、「その土地の持つ問題が顕在化している場合もあるけれど、北海道はそこが隠れていてよく見えず、それを顕在化させることも難しい。そこに亀裂を入れて顕在化させていく、特異なコンセプトの写真だと思って見ている」「北海道の歴史を顕在化させることの難しさも含めて写真にしていると思う」という言葉で「なるほど!」と膝を打ち。

本人たちはまだまだ話せそうな雰囲気でしたが、3時間経過したところで終了。私もさすがに脳みその疲弊具合が半端なく、帰りに速攻パフェで糖分補給しました。
「あー、これも読みたい、あれも見てみたい」と後追いしたくなるものをたくさん得ることのできるトークで、収穫度高かったな〜。
浅沼さんが、また「記録のための」トークをするときは、ぜひお邪魔したいです。
(編)
 

 

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