久しぶりに演劇を配信で見ました。

1本目は20歳の国『長い正月』。

今年の年忘れ演劇話の会で、三瓶さんがベスト5に挙げていた作品です。

自分に引き寄せるというよりは、ああやって何代にも渡って正月に集まってきた無数の家族を思ったし、その光景が一変してしまった能登を思いました。演劇は、自分とは異なる他者への想像力を育む術であると、しみじみ思う作品。

多分自分は「代々営まれてきた家族の…」みたいなものとも、「血のつながりが生み出す愛情や葛藤的なもの」とも距離がある人生を送ってきたので、本作で描かれていることに自分を重ねることはできなかったのだけど、同じ親の元に育った兄弟でも子どものいる兄弟がこれを見たら、また違う感想を抱くのだろうなー、とも。

2本目は、札幌座『民衆の敵』。

「一般社団法人EPAD/文化庁の人材育成・収益化に向けた舞台芸術デジタルアーカイブ化推進支援事業として助成を受け、実現」した無料配信とのことです。ありがたや〜。

本作のあらすじを公式サイトから引用すると

ノルウェーの田舎町で温泉が湧き、町は温泉観光開発への期待に沸いていた。しかし、開業医のトマス・ストックマンが町の製革所からの廃液により、温泉水が汚染されていることを発見、兄である町長に源泉の使用中止を進言するとともに、新聞に論文を発表しようとする。しかし町長は利益を優先し、経費の掛かる温泉の引き直しを却下。ストックマンが町民に警告を発しようと開いた町民集会の場においても、彼の意見は抹殺され、民意によって彼は「民衆の敵」という烙印を押され、彼とその家族は町で孤立してゆく…

という話なのですが、これがとても面白かったのです。

「民衆の敵」であると宣言されたストックマンは町を去ろうとするのだけど、土地を去るという選択肢があること自体が恵まれているし、「民衆の敵」と言う時の「民意」からこぼれ落ちている人たち(この話だと、温泉で健康被害が出ている人であったり、社会システムからそもそも除外されている浮浪児であったり)がいるわけで、

彼が考えを変えて町にとどまり、そういったこぼれ落ちている人たちのために診察してあげたり、学校を開こうとしたりすることを選択するのがとても良かった。

最初は生活のことを考えて味方ではなかった妻が、夫が軽んじられる?のを見てブチギレて、徹底的な味方になるところも良い。

井手茂太さんによる振付が不思議なイメージをつくりだしていて、これはやっぱり劇場で観てみたかったなーとしみじみ。

配信期間は5年間とのことなので、ぜひ忘れないうちに観てみてください。

(編)

 

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