帰りの機内で見た映画3本。
ルーカス・ドン監督『CLOSE』。
映画文筆家・児玉美月氏によるこの映画評にあった「多様で複雑であるはずの親密性を、単純化された恋愛か友情かの二分法によって絶えず審判しようとする暴力性を炙り出す」という考察、本当にそうだなと。そして監督の言葉として
「ヘテロノーマティヴ(※)で家父長的なシステムは、親密な者同士を必ず性的に見るよう植えつけるものです。だから、そのまなざしを解体したかった。自分にとって大事なのは、名前のない愛を見せることでした」
と。
クラスメイト(社会)の固定観念がなければ、二人の関係が壊れることはなかったし、一方が死に追いやられることもなかったわけで、本当にマジで今を生きる人たちは自らの価値観をアップデートさせることに意識的にならないといけない。
上の映画評にはとても発見があるので、観賞後の読み物としてとてもおすすめ。
2本目は川和田恵真監督『マイスモールランド』。
ただでさえ認定率がほぼないに等しい日本で、難民申請(一次)手続きの結果が不認定となると資格外活動許可を失うだけでなく、在留資格も失う(映画で父親に起こったこと)とか、仮放免中の就労を不可とする制度は本当に非人間的で、難民条約批准国とは全く思えないのですが…。
「ニッポン複雑紀行」という素晴らしいウェブマガジンを届けている認定NPO法人 難民支援協会(JAR)のサイトによると
やっとの思いで難民申請を行っても、難民申請の結果がでるまでには平均約4年、長い場合で10年近くかかります。難民申請中は政府からの支援金を受け取ることができる人もいますが、その額は限られており、また全員が受けられるわけではありません。最低限の衣(医)・食・住もままならず、時にはホームレス状態になってしまう人もいます。また、国民健康保険に入ることができない人もいるため、医療の受診は簡単ではありません。在留資格の無い難民申請者は「不法(非正規)滞在者」とみなされ収容される可能性もあります。
とのことで、少し前には制度がさらに改悪された感の入管法改正案が成立して、もう…。
とりあえず自分にできることは寄付しかない。就労不可な制度、ホントに改正してほしい…。
3本目はリューベン・オストルンド監督『逆転のトライアングル』
立場が逆転するのはそうなんだけど、お金が全く役に立たない(そもそも流れ着いた時点で何も持ってない)世界で、生きるために食糧を探し、シンプルに焼いて食べて、あとは寝るという生活の、「それができてれば十分」(できなければ死)みたいな部分も良かったな。
最後にモデルのヤヤがアリゲールに語りかけた言葉こそ、この格差&消費社会で重要な心持ちというか、使い捨てされるモノのような人間などいてはならないという「持てる人間」へのメッセージだと思った次第。
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