わたしのペンは鳥の翼 アフガニスタンの女性作家たち』読了。

「紛争地域の作家育成プロジェクト〈UNTOLD〉による企画編集で、3年前からイギリスとアフガニスタンでやりとりをしながら、「小説を描きたい」という女性たちを広く募り、一冊へとまとめ上げた」本書。(詳細は上のリンク先、出版社の紹介ページからどうぞ)

主にニュースを通して見聞きしてきた遠い地の暮らしが、束の間の喜びや美しさ、だからこそ、抑圧や貧困、死が隣り合わせであることの苦しさ、といったものを伴って生き生きと脳内に立ち上がる時間で、物語が持つ力を強く実感。

特に、第4部の『アジャ』が好きでした。

最初は村の誰からも相手にされず、アジャ一人で、そして次第に女性たちが少しずつ加わり、掘り進めた水路で村を洪水から守るというお話で、

最後、村に戻った男たちから「女たちだけでこの水路を完成させたのか」と驚かれたときに、闘志を秘めた静かな口調で彼女が言う

「女たちは土地を耕し、子どもを育てている。井戸から毎日バケツに水を汲んでいる。女が力を合わせれば、ちいさな水路を掘るくらい、なんてことないのよ」

という言葉に涙目になってしまった…。

他にも、本当にささやかな抵抗が、凝り固まった因習に小さな波紋のように伝わり、周囲の間に少しだけ変化が起こる様が書かれた作品もあり、

(例えば、『花』の中で最後に「娘よ、学校へ行って、自分の思うように生きろ」と言うことができた父とか。)

2021年夏にタリバンが政権を奪還し、女性への抑圧も急激に強くなるという状況の中で、作家たちが物語に託した願いの切実さに打たれる。

訳者あとがきにもあったように、この作品集がダリー語とパシュトー語のまま、アフガニスタンで出版される日が来ることを願います。

ペンは鳥の翼であり、そこから生まれる物語が読者の心に鳥の翼を生み出してくれる。

作家たちの切実さが波紋となって、その地で生きる女性たちに力を与えることのできる日が、どうか訪れますように。

(編)

 

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