チョン・ミョングァン『鯨』、読了。

晶文社のサイトから以下引用。

誰が知るだろう、この物語のすべてが
一編の復讐劇でもあるということを──

一代にして財を成し、あまたの男の運命をくるわせた母クムボク。並外れた怪力の持ち主にして、煉瓦づくりに命を賭した娘チュニ。巨大な鯨と煉瓦工場、華やかな劇場をめぐる壮絶な人生ドラマが幕を開ける──。ストーリーテラーとして名高い著者が、破壊的なまでに激しく生々しい人間の欲望を壮大なスケールで描き出した一大叙事詩。第10回文学トンネ小説賞を受賞し、韓国で累計15万部を記録したロングセラー、待望の邦訳。
韓国の若い作家を紹介するシリーズ〈韓国文学のオクリモノ〉最終巻・第6回配本。

480ページの分厚さですが、一気に読めてしまう面白さ!

現実の歴史とリンクしつつ、かつフィクショナルな世界で、さまざまな「法則」に則って繰り広げられる「破壊的なまでに激しく生々しい人間の欲望」に唖然とする。

し、

淡々と物事がスパークしていくのがすごい。

「法則」ゆえのカラッとした語り口からは、どんな愚かさや悲劇にも「仕方なさ」が漂って、残酷だけど「仕方ない」よなーと思わせる効果があるけれど(「無知の法則」にはハッとした)、

しかしこの激動さは朝鮮半島が歩んできた歴史そのものでもあって、その時間を生き抜いてきた人たち、生き抜くことができなかった人たちのことを思いました。

ちなみに、ここはフィクションだろうと思ったエピソードが、まさかのリアルだったことが訳者あとがきからわかってのけぞりつつ。将軍自作の歌で全国民を一斉起床させたとか…

あと、チュニの話を映画化しようとなってからの、スター女優&俳優のメンツを立てるために放送作家が設定に苦悩する部分とか、皮肉が効いてて良い。(いかにもありそう)

最後、

チュニとジャンボが邂逅し、宇宙の彼方で消滅した瞬間、思いがけず泣いてしまいました。本も抱きしめましたよ…。

いやあ、良い読書体験だった…

2023年英ブッカー国際賞のロングリストにも入ってて、本作がブッカー賞をとったら嬉しいな。

(編)

 

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