続いて二冊目。上野千鶴子・鈴木涼美『往復書簡 限界から始まる』
エロス資本 / 母と娘 / 恋愛とセックス / 結婚 / 承認欲求 / 能力 / 仕事 / 自立 / 連帯 / フェミニズム / 自由 / 男というテーマで相手に問いを投げかけつつ、お互いが「それまで誰にも話してこなかったようなことを吐露せざるを得ない相手」であるため、ものすごく深くて真摯な言葉のやり取りに立ち会える一冊。
私は人の数だけあるグラデーションの中で、年代的に鈴木さんの受け止め方に近い部分も多く、だからこそ彼女の現時点での捉え方に対して上野さんが切り込むまっすぐな道標のような言葉にハッとさせられたり、知性を持って自身の現在地を見つめていこうとする鈴木さんの言葉が琴線に触れたり、なんだか両者の言葉には度々涙ぐんでしまいました。
自分の中の根深い思考の癖や歪みや曖昧な部分、脳みそがすっかり学習してしまった無意識の反射レベルの思考回路から脱出するには、繰り返しこういう言葉を入れていくしかないなあ、と思います。
本書には2020年5月〜2021年5月までのやり取りが収まっているのだけど、最後に上野さんが鈴木さんに贈った言葉が、「あなたが今、何者であるかのほうが、かつて何者であったかよりも、もっと大事です。」というもので、何度か、鈴木さんの今は亡き母親の存在が代え難いギフトになるはず、という言葉も出てくるのですが、
先日芥川賞候補となった鈴木涼美さんの中編デビュー小説のタイトルが『ギフテッド』。痺れる…。読みたい。
続いて三冊目。太田啓子『これからの男の子たちへ』。
現状認識をするキツさを味わった一冊…。社会の現状ってことでももちろんあるし、もし20〜30代の自分が男の子を産んでいたら、それこそ今で言う「有害な男らしさ」をバリバリ植え付ける子育てをしていたことは確実だったな…と認識する辛さ…。(正直今だって心もとない…)
つまり前述の「自分の中の根深い思考の癖や歪みや曖昧な部分、脳みそがすっかり学習してしまった無意識の反射レベルの思考回路」から抜け出すことがいかに困難か。ってことなんですけど…。
あとは本書でも触れられているのですが、いくら母親個人で努力をしても、結局家以外の場所やメディア等、見聞きするあらゆるものが「有害な男らしさ」の刷り込みをしてくるので、またそこでキツさが。
で、『往復書簡〜』の方で上野さんも指摘していますが、「どうして性暴力の問題を解決しなければならないのが、被害者側である女性なのか。男の問題は男たちが解くべきではないのか。」ということ。
太田さんも、世の男性には(性暴力に限らず)「特権を持つ側としての責任を行動で果たしてもらいたい」と、最後の方多くを割いて書いています。いやホントにね…。
しかし自分も頭ではそう思いつつ、じゃあ自分にとって一番身近な成人男性に対して、モヤッていることや「有害な男らしさ」みたいなことを話しあえるかと言うと、いやあ…これも厳しい…。まあそういうしんどいやり取りをしないで済むよう、自分は距離を確保することを選んだのですが。
『これからの男の子たちへ』は…キツかったな…。
なので、とりあえず最後に
本書で紹介されていたカミソリメーカーのジレットが製作した啓発動画を載せておきます。
「Is this the best a man can get?(これが男ができるベストのことか?)」という問いかけから始まり、集団で弱いものいじめをする男の子たちや、女性へのセクハラ、暴力的な喧嘩をする男性たちを「Boys will be boys(男は仕方ないよ)」という言い訳で傍観してきたことに触れ、「しかし何かが変わった。もう後戻りはしない。次世代のために正しいことをしよう。」というメッセージで終わる動画です。
ふう。
現在地の認識ってキツイことだから、男性側からしても本気で自身に向き合おうとしたら相当キツイんじゃないだろか。
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