観た映画。
セルゲイ・ロズニツァ監督『ドンバス』@サツゲキ
2014年に一方的にウクライナからの独立を宣言し、親ロシア派勢力「分離派」によって実効支配されているウクライナ東部ドンバス地方で実際に起きた実話をもとに構成された作品。
地下シェルターでの生活の様子も出てきますが、あれは相当きつい…。300人もの人たちが2カ月間も過ごしたマリウポリの製鉄所の地下シェルターの過酷さを想像…辛い。
そして、ウクライナとロシアの間の歴史的なことや、ウクライナにおけるこの東部ドンバス地方の位置づけみたいなことをもう少し自分は知る必要があるなと思いつつ、下克上の苛烈さというか、それまで軽んじられていた(と感じていた)人たちの立場が反転したときの「(仮想であっても)これまで自分を軽んじてきた人たち」に対する鬱憤を晴らす凄まじさについて考えてしまったなあ。
敗者を作らない社会システムは、社会が万が一ひっくり返ったときに報復を受ける可能性を、誰にも作らないという意味で重要なんじゃないかしら。そして、システムが現状そういうものであっても、自分個人として他者を軽んじないことの(予防的意味合いにおける)重要さもしみじみと。
早い日常の中で疎かになりがちな「他者への敬意」、肝に銘じなければ。
(ちなみにサツゲキ、自分が最後に足を運んだのはプラザ2.5時代だったので、素敵な雰囲気の映画館に変身していてびっくりしました。)
続いて
湯浅政明監督『犬王』@シネマフロンティア札幌
むちゃくちゃ格好良かった…!
能が猿楽と呼ばれていた頃の物語をもっと観たいと思っていたので、イメージのストックができた感じもあるし、改めて、今残っている歴史というものは「残せる手段を持っていた者による選別された」歴史なんだなと。
現代はネット&SNSの発達で誰もが痕跡を残せるようになったけど、数百年後(にまだ人類がいたとして)、現在の歴史はどのように残っているのだろう。どのような芸術がどのように人間を語って、どんな物語が語られているのでしょうねえ。
あ、そういえば、最後に犬王が舞った湖?に立つ能舞台を見て、あーこれに近い雰囲気で能を観れるのはあさば旅館かもー、と思い出しました。
いつかここに泊まって能を観たい…!高級お宿!
続いて
デヴィッド・フィンチャー監督『Mank』@Netflix
『市民ケーン』を観たことがなかったのと、1929年以降の世界恐慌真っ只中な時期のアメリカ史にも疎かったので、最初結構「?」となったのですけど、後半あたりから徐々に理解が追いつきました。
劇中、1934年に行われたカリフォルニア州知事選挙が出てくるのですが、民主党候補を落とすために、ハリウッドに強い影響力を持つ新聞王ハーストやMGMの経営者ルイス・B・メイヤーが結託し、フェイクニュース映画を製作してアンチキャンペーンを行ったことが触れられていて。
『ドンバス』を観た後だったので、こんな時代からフェイクニュースが活用されていたのかーと。
※この解説も参考にどうぞ。
上↑の解説に出てきた監督の父(ジャック・フィンチャー)が語ったという「これは、自分たちが語る言葉の重要性を見出す人たちの物語なのだと思う。」という言葉が、ちょうど今読んでいた本での経験とも重なって響きました。
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