うっかり時間が空いてしまいましたが、見たものを。

犬飼勝哉『給付金』。

給付金をもらえる人ともらえない人がいる中で、「(もらえたことを)周りに人がいるときに話題にすべきではない」と言う彼と、「もらえない人のことを考えないことが、(罪悪感を覚えずに)幸せになるコツ」と言う彼女。

自分の状況を(世界規模で)他者と比べると上にも下にもキリがなく、上を見れば劣等感、下を見れば優越感やら罪悪感やらで、自分の人生の今をきちんと生きれなくなってしまうので、

大前提として「自分の人生をしっかり生きよう」と考えると、彼女の言うことがわりかし当てはまる。

しかしそうは言っても、苦しむ他者は自分のもう一つの人生であったかもしれず、今の自分は単なる巡り合わせの結果でもあるわけです。だから、この社会に生きている上で「全く自分とは関係のない他者」と切り分けて済む話とも言えない。

『給付金』の彼女は「考えないことで幸せになる」コツを、ふとしたはずみにあっさり手放して、「他者を思いやることでもいい気分になれるじゃん」というあっけらかんとした素直さ(現実的に考えると危なっかしいやり取りなんだけど)を発揮しており、寓話感があって良かったな。

私としては、まずは自分の今(目の前のこと)。休み休みに社会のことと国内外の他者のこと(俯瞰で見ていくと結局は自分に直結していること)。というバランスが自分に合ってるな、と思ってる次第です。

ちなみに、明日18日までは同『ノーマル』が公開中。

次。

オンライン開催していた山形国際ドキュメンタリー映画祭のインターナショナル・コンペティションから、エリアーン・ラヘブ監督『ミゲルの戦争』

神学校を出た父と、シリアの名家の出で父とは見合い結婚の母の間に生まれたミゲルは、子供の頃から優秀な弟と常に比べられ、母親の愛情を全く感じられずに育ち。かつ自身がゲイであることを自覚してからは宗教的な葛藤まで加わり、レバノン内戦が勃発後は民兵に志願。

そこで凄惨な暴力を目撃し、民兵組織から脱走して自宅に戻った際には母に暴力を振るってしまい、国も自分もどん底なレバノンを捨て、スペインへ。

軍隊にいたときからスペインに渡って以降も、自分を罰するように通りすがりの性行為を繰り返したミゲルも、移住から30年近く経った現在は要人の通訳もこなし、まずは満足できる自分になれたという思いがありつつ、誰も愛したことがないという欠落は変わらず。

深い罪の意識と葛藤と屈折が何重にも重なった彼の語りは虚実いりまじり、よくまあ監督(レバノン出身の監督は、スペインでの上映会でミゲルが通訳をしたことがきっかけで、彼の半生を聞き、ドキュメンタリーを撮ることになったそうな)は彼と向き合ったな…と思うぐらいには根気がいる感じ。

でも、そうやって監督によるインタビューや再現演劇などを通じて、ミゲルが自身と向き合っていったことで、監督自身の変化やミゲルの内面の変化が起こり、最後には微かな「肯定」の予兆を感じさせて終わるところに唸った。

観るのに体力を使ったけど、だからこそ、この微かな変化のすごさを感じました。

それにしても、レバノンの歴史も複雑で、1、2回調べただけでは全然頭に入らないっす。おいおい整理していきたいものであります。

(編)

 

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