前回の続きで
11/30(月):シャウビューネ劇場『オーランド』(演出:Katie Mitchell)
昨年9月初演の本作。ヴァージニア・ウルフの『オーランド』自体これで知ったのですが、映画版はティルダ・スウィントンが演じているのかー。
映画版も見たい。
シャウビューネ版に話戻り、いやー、演出面白かったです。舞台上部にスクリーンがあって、録画したものと舞台上でライブで撮影された映像がごっちゃになって映し出されるのですが、
オーランドの食事として手元だけ写っている映像は、実はスタッフが隣の部屋でお皿をいじって映している、という感じで「映像って、ホント嘘をつけるメディアだな〜」としみじみ。目の前の舞台上で起こっていることと、スクリーンに見えるものが全然違う。
※演劇もそもそも嘘だけど、堂々と「これは嘘です」と言っちゃってるのが演劇(そこを揺るがしてくる作品もあるけど)で、映像の嘘は本当のことのように見せてくるから油断できない。
あと、全く別のアングルから映し出された映像には、自分の見ているところからは想像もつかない物事が映っている、とか。
オーランドは16世紀〜20世紀にまたがって生きて、後半は性別を行き来するのだけど、時代設定的に昔と現代のものが一緒に舞台上にあったり、とか。
で、オーランドは男のときも女のときも性的に楽しんでいる感じで、良かったな〜。
あと衣服が「その性別っぽさ」を作るのは本当にそうだなーと自分も思ってて、例えば和服を着ているときは動きがかなり制限されるし、着崩れしないように気をつけていると、必然的に「女性っぽい」「淑やかな」と形容されるような佇まいになるんですよね。なもので、着物で外出するときは、自分にとってある意味コスプレみたいな感じ。
洋服で過ごすときは、中性が好きです。
12/1(火):『ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-』@Netflix
主人公の母親は薬物依存に苦しむのだけど、きっかけは看護婦時代にこっそり取っていた患者用の医療用鎮痛剤だったっぽいから、今大問題になっているオピオイド中毒だったのかなあ。薬物依存は本人の努力でなんとかなるとか、そういう世界じゃないから、母親の苦しみはいかほどか…。
しかも、そもそも薬物に手を伸ばしてしまう原因は、自分の可能性が閉ざされてしまう環境にあって、努力する場が与えられないことの残酷さがな…。上野千鶴子氏の祝辞を思い出してしまった。
祖母を演じたグレン・クローズも素晴らしかったです。
12/2(水):『Fibres』
Glasgow’s Citizens theatreとStellar Quines companyの共同制作作品。こちらから無料配信しています。(12/23まで。予約手続きをすると視聴URLが送られてきます。無料だけど寄付推奨。)
造船所の電気技師として長年働いたジャックは、会社側がマスク使用など適切な処置を労働者にしなかったせいでアスベスト肺がんを患い、その妻ビーニーも、アスベストまみれの夫の服を洗濯していたことが原因で肺がんに。
娘(30代独身)は両親の死後、補償手続きをしなくてはならないのだけど、お金と二人の命を結びつけることに抵抗を感じ、実家に放置された衣服の山も整理できずにいる。という設定。
両親を通して、アスベストによる健康被害という政治的な部分と、洗濯に象徴される結婚に伴う性別役割分担、長年連れ添った夫婦の恋愛に関することなどが並行して描かれるのですが、
両親を見ていて恋愛や結婚に二の足を踏む娘には、新しい価値観のパートナーシップ(職場の上司が、彼女の代わりに実家の服をきれいに洗濯して整理整頓する)がもたらされて終わる、という温かなエンディングが良かったな。
で
本作を見て思ったのですけど、
以前、鳥の劇場で『イワンのばか』を見たときに、代表の中島さんが「大人と同じ目線で、子どもでもきちんと舞台上を観れるようにしてあげると、大抵どんな作品でも最後まで観ていく」
「普段の生活で子どもたちの前で繰り広げられる世界だって、(子どもでもわかるように配慮されたものがあるわけじゃなく、)子どもたちからすればわからないことだらけじゃないですか」
と話していて。
英語音声で演劇を見ている私は、そこで話される言葉の意味の全ては理解できておらず、上の言葉で言えば、子どもと同じ感覚で演劇を見ているのだけど
「大事なこと」はきちんと伝わってくるんですよね。
『Fibres』も、うまく言語化はできないのだけど、わからないながらにじんわり心に染み入るものはあって、「今、大切なものを見ている」と感じることはできる。
そう考えると、きっと『イワンのばか』を見ていた子どもたちも、同じような感覚だったのだろうなあ、と。
なので、変に子ども向けとか考える必要はなくて、やっぱり大切な演劇は大人も子どもも隔てずに見ていいんだなと、ストンと腑に落ちた次第。
11/3(木):新千歳空港国際アニメーション映画祭のトークアーカイブから、第三夜「AC部特別プログラム」を。
面白かった〜!
group_inouの『CATCH』とか
POWDERのNew Tribeなど。
宇川さんのAC部作品解説もすごかったです。
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