前回の続き。
10/30(金):ジョン・マッデン『女神の見えざる手』@アマプラ
めちゃくちゃ面白かった…!勝利にこだわるために犯してしまった自分の過ちを認め、信念はきちんと言葉にし、なおかつ最後の最後で最大の切り札を切るスローン氏。いやー爽快。
10/31(土):スパイク・リー『PASS OVER』@アマプラ
Antoinette Nwanduによる戯曲は、アフリカン・アメリカンの17歳の少年(トレイボン・マーティン)が自警団に銃殺された2012年の事件への応答として書かれたもの。
ジョージ・フロイドの死の後、シカゴのthe Steppenwolf Theaterで上演された本作を、スパイク・リーが記録、公演を見にバスでやってきたアフリカン・アメリカン・コミュニティの観客の様子も切り取った、ドキュメンタリー映画です。
この作品は…しんどかったなあ。白人男性が奪って「自分たちのもの」にしたものを守り、常に自分たちが得て、繁栄していくことを保証するために作ったシステムを、アメリカは変えられるのだろうか。大統領選の混乱がやるせない。
翻って、日本の、日本国籍を持つ男性によってつくられてきた価値観やシステムだって、変えていかないといけないですよねー。
11/1(日)〜11/2(月):WiFiのない環境に戻ってしまったので、読書スタート。
伊達聖伸『ライシテから読む現代フランス -政治と宗教のいま』
フランスの街中で起こった斬首事件に衝撃を受けながら、関連ツイートで著者を知り、早速。
ライシテって、日本語だと「政教分離」に当たる言葉ではあるのだけど、著者によると「1789年のフランス革命が一つの特権的な起点をなす」と。
「宗教に抗して、人間の自律と尊厳を勝ち取った歴史と記憶が、共和国フランスのライシテ理解の根幹に横たわっている。」「ライシテにはさまざまな側面があり、一義的な定義は不可能である。複合的な要素を組み合わせてみても、そこには定義を試みる者の立場性が必然的に反映される。」と言います。
で、実際に政治家から活動家まで、さまざまなライシテに関する言説を例に挙げ、どんな立場性が反映されているかということを解説していくのですが、これがもう深い…。
特にムスリム女性当人の発言を見ても、ライシテを抑圧からの解放と見る女性、「イスラームの普遍主義とライシテの普遍主義は共鳴する」と説いてフランスにおけるヴェールの意味を組み換えようと試みる女性、ヴェール禁止法はムスリムを「同化不可能」と決めつける「文化的な人種差別」と捉える女性…とさまざまで。
読んでいて、どの意見にもうなずける部分がありながら、これだけ複雑で多種多様な意見の、合意できる部分を見出していくのが「政治」の仕事なのだなあ、と。
わかりやすい二元論では決してない本書、複雑なものを複雑なままに見せてくれる、こういう語り口が信頼できるなあ。今後、何度も読み直さないと消化できない内容だけど。
自分としては、これまで宗教を説いてきたのが男性だったことを考えると、その意味を組み替えていこうというサイーダ・カダの主張が、自分の立つ位置としてもしっくりくるなと思いました。
11/3(火)〜11/4(水):引き続きWiFiがないので、読書。
次に読んでいるのは、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』。
まだ読みかけです。
2016年の大統領選でヒラリー・クリントンが闘わなければならなかったもの、男性がしても見逃されることを女性がすると叩かれること、選挙権を剥奪された何百万もの人たち。
ってあたりを読んでいるときに大統領選の開票が始まって、最初はトランプ氏が優勢だったから本当にぐったりしかけたのだけれど。
ちなみに、この本を知ったのは、訳者である渡辺由佳里さんが書いたコラムがきっかけ。
最近cakesで問題になったコラムに関して「なぜ女性はよく『嘘つき』呼ばわりされてしまうのか、をテーマにcakesの場で私なりの考え方を書かせていただきました>
力の弱い者が嘘つきにされがちなこの世の中で |渡辺由佳里 @YukariWatanabe |アメリカはいつも夢見ている https://t.co/RlyYjMdEAN
— 渡辺由佳里 YukariWatanabe (@YukariWatanabe) October 27, 2020
上のコラムも、読んでてなかなかに苦しい気持ちになりつつ。
本については、読み終えたら、また改めて書きまーす。レベッカ・ソルニット、『災害ユートピア』もだいぶ前に買ったのに、いまだ積ん読。読むタイミングがなかなか来ないこちらも、手に取るのはいつになることやら。
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