札幌文化芸術交流センターSCARTSで開催中の、中島洋 市民参加型プロジェクト『記憶のミライ』へ。
(展示詳細は上のリンク先をどうぞ。)
札幌市民から寄せられた8ミリフィルムを編集する過程について書かれた、会場配布の「私なりのステートメント」には
はじめの編集ではデジタル技術を多用して、8ミリとデジタルの融合的な映像編集が中心的なものでしたが、何かが違うなあという感覚があり、再度編集をやり直すことにしました。
とあり。その後「オリジナルの原型をできるだけそのまま残して活かすように」編集し直したそうな。
会場にはスクリーンが箱状に4面設置されており、内側に入って映像を見ると
こんな感じ↑に、鑑賞者が映り込むところも良い。
提供された8ミリフィルムのうち、最も古いのは1950年代後半頃に撮られたと思われるモノクロのもので、そこから80年代後半頃までのホーム・ムービーで構成。
当時撮った人は、まさか数十年後、この私的な映像にいろんな人が思いを重ねることになるとは、全く予想しなかっただろうな。
撮影した8ミリフィルムを現像して、映写機にかけて、「過去の時間」が目の前に現れた瞬間の、ある家族の幸せな驚きの時間までもが、普遍的なものへと形を変えて目の前にあるようで、グッとくるものがありました。
自分は目の前のことを動画で記録したいと思わないタイプの人間だったけれど、昨年頃から、離れて暮らす猫と山にこもった時なんかに、「猫も高齢で、こうやって一緒に山にこもれるのも残り少ないだろうな」と、たまに動画でちょっとした姿を撮るようにはなっていて。
今年3月に猫の余命がわかってからは、リアルに「二度とない、この時間を残したい」と、ただ寝てる姿を撮ったり。
今まで感じたことのなかった「二度とない、この時間を残したい」という気持ちが自分の中に生まれた後だったこともあって、スクリーンに映し出される私的な映像の、撮った側の(もしかしたら無自覚だったかもしれないけど)願いをつい想像してしまって、なおさらグッときつつ。
そして
ここからは、ものすごく今の自分に寄せて受け止めた、超私的な感想になるのですが。
箱状に4面設置されたスクリーンの内側には水槽があって、そこにも映像が投影されており。
水槽やスクリーンの映像に見入りながら、ずっっっと過去の時間に没入していたわけですが、「ポチャン」という水滴の音にハッと。
あの瞬間の、現在の時間に再びつながった感覚も劇的だったけど、
何より、そのあとで、水槽に沈む8ミリフィルムの欠片を眺めながら、
フィルムはあくまで時間を記録する「媒体」で、もしフィルムがなくなったとしても、「いつかの時間」が記憶としてある限り、それは現在にも未来にもつながる時間として存在し、決して「過去だけの時間」ではないのだ。
という思いが、ふと。
そして、その思いが浮かんだ途端、涙が止まらなくなってしまって慌てた…。(マスクしていて良かった…。)
というのは。
2週間前に猫を亡くして以来、「どうすることもできない」という思いがなぜか浮かんで、その思いは酷く自分を悲しい気持ちにさせていたのだけど、「何を」どうすることもできないのが悲しいのかがよくわからず。
会場で涙が止まらない状態になってわかったのだけど、私は、「猫が生きていた時間」が、どんどん今私が生きている時間から離れていくこと、「過去の時間」になっていくことが、悲しかったんだなあ。
その、どうすることもできなさ。に、打ちのめされていたのだと思います。
でも
水滴の音で過去と現在が混じり合って、そこに細切れになったフィルムを見たとき、私が猫の記憶を頭に浮かべる限り、「猫との時間」は、その瞬間とも、未来とも、つながり続けるのだ。と思えまして。
そして、そう思えたことは、やたらと自分の涙腺を刺激するんだな…。帰り道も、そのことを考えると涙が止まらなくなって、マスク様様。
いやあ…本当にすごく良いタイミングでこの展示を見れて、本当に良かったです。「記憶のミライ」…!!!
あとはー
「私なりのステートメント」に、洋さんが来場者と話す中で感じた作品についての分析なども載っていて、それはまた自分とは違う受け止め方で、それも新鮮だったなー。
本展は20日(月)まで。SCARTSではちょうど、チェルフィッチュの〈映像演劇〉「風景、世界、アクシデント、すべてこの部屋の外側の出来事」も開催中ですので、街中へお越しの際はぜひ!
映像演劇については、次の投稿に書きまーす。
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