お次は、慶應義塾大学三田キャンパス旧ノグチ・ルームへ。
シアターコモンズのリーディング・パフォーマンス、萩原雄太/太田省吾『更地』を。
※リーディング・パフォーマンスについて、シアターコモンズのサイトから引用。
声に出して戯曲を読む。演劇にとって最もシンプルな営みは、俳優だけではなく、あらゆる人に開かれている。だが、実際に一つの戯曲を最初から最後まで声に出して読んだ経験がある人は意外と少ないものだ。それでは今、オリンピックを控えた東京で、自分が声に出して読むとしたら、どこで、どんな言葉だろうか?
リーディング・パフォーマンスと題する本企画は、この問いを投げかけられた3人の演出家が提案する戯曲を、ある場所で、複数の参加者が初見で音読するというものだ。特別な準備や練習もない、ただ、戯曲に書かれた言葉を、たまたま居合わせた他の参加者とともに、声に出して読む。過去に書かれた言葉は、2019年の東京に生きるあなた自身の身体を経由し、「いま、ここ」にどのような変容をもたらすのか。3人の演出家が仕掛けるささやかな音読の時間と空間は、都市・東京の日常に、媚薬のように波紋を広げることになるだろう。
戯曲を声に出して読むのは地味に初めての経験だったのですが、思いの外、戸惑いました。
というのは、今回のリーディング・パフォーマンスでは、参加者が輪になって順繰りにセリフを読んでいったので、まず「内容」というものに没入できないんですね。うっかり没入すると自分の番が回ってきたときに慌てるから。
そして
いろんな人のいろんな声と読み方で、戯曲に書かれている言葉が読み上げられていって、自分の番になったとき、「セリフを声に出して読む私」が何とも怪しい。
この「セリフを発話する」行為が、どうにもこうにも「どこかで聞いたようなセリフの言い方でセリフを読み上げる」行為になってしまい、
「えー、何だこれは、他人のセリフを私が発するって、一体どおいうことなんだ???」とぐるぐるしながら、しかし容赦なく順番は回ってくるので「どこかで聞いたようなセリフの言い方でセリフを読み上げる」ことに終始してしまった次第。
過去に書かれた言葉は、2019年の東京に生きるあなた自身の身体を経由し、「いま、ここ」にどのような変容をもたらすのか。
とありますが、確かに私の身体を経由したとはいえ、あのとき私から出た言葉は本当に私の身体から出たものとは言えないような気がしつつ、じゃあ、「私の身体から出る本当の言葉、本当の発話」ってのは一体何なんだろう。自分の言葉以外で、果たしてそんなことが可能なのかな?
戯曲に書かれている言葉を発するって、どおいうこっちゃ!超難しい…!
というモヤモヤした感触と、
それでも
見ず知らずの人たちと「終演することができた」瞬間の、ささやかな満足感であったり
『更地』に書かれた「二人だけしか知らないことは、現実にはなかったことかもしれない」という一文にぐいっと掴まれたり。
「歴史」として文字に残らない、記録に残らない、無数の「あったこと」。
自分が2011年8月から2015年8月まで住んでいた中央区の家も、そのあと更地になってしまいましたが、更地になった後の光景を見たときの喪失感は忘れられないな。
「あったこと」の記録はちゃんと残して整理しておこうと思って、自分のために急遽タグ付けを思いつき、少しだけ取り掛かり始めたのですが、いかんせん膨大…。
今後時間のあるときに、合間を見てせっせとタグ付けしていこー。とりあえず中央区の家時代のことは(まだ少しだけだけど)こちらに。懐かし〜。(100%自分のためのアーカイブですね。)
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