さて、TGR2014関連は、時間堂『衝突と分裂、あるいは融合』で終わりたいと思います。
今も、おそらくこの先も、私の隣に居続けるであろう本作。
について書く前に、しばらく自分が欲していたことについて、先に触れます。
いつ頃から?と言われれば、震災以降からのような気もするのですが、作品に対して安心して感想が言えてしまうことに違和感を抱いていました。
(それについては、夏に見た『BABEL(words)』についてのエントリーにもチラリと書きました)
「安心して感想が言えてしまう」というのは、「自分の足元が揺らがない」という意味で使っています。
例えば、今回大賞を獲った『アイランド ―監獄島』。
とても力強く素晴らしい作品だったけど、やっぱり自分の足元は揺らぎませんでした。
南アフリカでの抑圧の歴史、人種差別の歴史と、現代日本とのリンクについては、公開審査会でも話題になり、うまく今の社会と結び付けて自分ごとに引き寄せた人もいれば、そこがうまくいかなかった人もいます。
もし、同じテーマで日本とアジアの国との歴史を描いた作品だったなら、私の足元は揺らいだかもしれません。
南アフリカ、という国の出来事だったから、私は安心して見ることができました。
『TOP GIRLS』についても、強く自分事として響いた人はもちろんいます。でも、とりあえず今の私には、「女性としての生き方」は、足元が揺らぐような切実な問題ではなかった。(状況次第で、いつでも自分にとって切実な問題になりうるテーマではあります)
今、私にとって切実な問題は、やっぱり「異なる立場、考えの人との対話は可能か?」でした。
教員時代も、そのあとも、集団とか組織に属していた頃に何度となくぶち当たった壁であり、結局うやむやにしていた問題でもあります。
うやむやに過ごしていたら、(でも、夏に『人の気も知らないで』を見たとき、ちょっと「これは自分にとって糸口になるかも」とも思っていた。)
放射線の問題によって、近しい人との間にも見事に「違い」が生まれてしまった。
『知ろうとすること』を読んで、そして近しい人と話したときに、やっぱりデータでは超えられない感情レベルの壁を痛感したし、そういうときに相手に私の考えを理解してもらうことのモチベーションも見つけられませんでした。
(でも、こういった場合に、ただ相手の考えに寄り添うだけでいいのか?とも思った)
そういった経緯があった上で、『衝突と分裂、あるいは融合』との出会いです。
理論だけで物事が進んでいくならシンプルなのに、やっかいなことに人には感情があるのですよね。
理論100%のような女性科学者と、理論を共有しながらもそれぞれ異なる背景から生じる感情を抱く他の科学者と、感情100%のような女性教師。
彼らのやり取りを見ていて思ったことは、
自分の中には上記の登場人物の全てが潜んでいて、自分の身を守るため、そのとき置かれた立場に最適な登場人物を出しているだけなんだろうなあ、と。
でも、この作品が自分のそばにあったなら、対話する過程の面倒臭さに対する耐性とか、リスクを取ることに対する耐性が、少しだけできるかもしれない。
そして、自分(や相手)の考えが生成される「過程」に、もう少し意識的になれるかもしれない。
と、
思ったのでした。
あと個人的に響いた言葉は、サンコの「大丈夫よ。世界は便所以下だけど、生きてるだけで丸儲けじゃん。」でしょうか。
こういう、内から沸々とわき上がるような希望のあり方が好きです。
希望は外から与えられるものじゃーないよな。
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