続いて、10日(日)まで公開されていた劇団チョコレートケーキの過去作品から『遺産』を。以下、劇団サイトの作品紹介文。
-私は知っている。あなた方があそこで生きたまま切り刻まれたことを。-
1990年、ある老医師が死の床にあった。その枕元に過去の亡霊が姿を現す。
旧満州ハルビン市郊外ピンファン。そこで蓄積された『遺産』は決して清算
できない歴史の深い闇である。日本人はこの『遺産』とどう向き合えば
いいのだろうか?
本作、731部隊で人体実験を主導した医学者たちの話です。
少し前に某グループで、日本の侵略戦争と植民地について調べていくときにオススメの本や映画等の話題が出ていて、自分の中でも改めていろいろ見ていきたいモードになっていたトピック。なのだけど、重かった…
つい合わせて、NHKスペシャル「731部隊の真実~エリート医学者と人体実験~」も。
『遺産』では、人道に対する犯罪への抵抗感と研究を思う存分進められることへの抑えがたい喜びとに引き裂かれる医師の姿や、中国人を蔑視する隊員に向かって「解剖すれば人種による違いなんてないさ」と冷めた口調で語る上官(と言っても彼は決して良い人間としては描かれていない)、「マルタ」ではなく意思疎通ができる人間だと感じてもらうために必死で日本語を覚える中国人女性、母親を思い出させるその女性を殺さなければならなかった少年兵など、さまざまな立場が描かれていて、考えどころがとにかく多い。
でも、『遺産』でも、NHKスペシャルでも、一番刺さったのは、最後に全囚人をガソリンで焼き殺さなければならなかった元少年兵の方の
『いや、戦争っていうのがこんなものか』と。戦争ってのは絶対するもんじゃないと。つくづくそう思いましたね。ほんとにね、1人で泣いた。
の部分です。NHKスペシャルで触れられていた、刑に服した後に自殺してしまった軍医の方の発言も辛い…。(こちらから読めます)
731部隊で凍傷の研究を命じられた吉村寿人氏は、『遺産』にも登場するのですが、回想「喜寿回顧」の中で
個人の自由意志でその良心に従って軍隊内で行動が出来ると考える事自体が間違っている。軍の何たるやを知らず、ましてや戦争の本質などを知らない若い記者が現在の民主主義時代の常識から書いた誤報である事は歴然としている。
(こちらの記事から引用)と書いていて、確かに彼を「悪魔」と罵ることは違うなと私も思う。とはいえ、「だから仕方なかったのだ」「だから当時のことはなかったことに」ともならないですよね。
戦争下の特殊な状況において、個人が罪を負って終わるようなシンプルな問題などないのだから、なおさら国や軍が過ちを認め、検証し、その光と影について議論し続けていくことが大事なのに、そういう作業がすっぽり抜け落ちてしまうのが日本の歴史…。
(でも2007年には、医学会総会で医学犯罪を問う『戦争と医学』展が開催されていたことを知りました。これは後追いしたい。)
アメリカが人体実験のデータと引き換えに医学者たちの責任を免除し、帰国後の彼らが各分野での権威となっていく流れもきつい…。
そんなこんなで
『遺産』で扱っていたものがパンチ力ありすぎて、ブログに書くのにも時間がかかってしまいました。
劇団チョコレートケーキ、タイミングが合ったら公演を見に行きたいな。過去作品の『治天ノ君』や『追憶のアリラン』もかなり気になる。
そして、劇団名とのギャップがすごい。
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