勉強はそこそこに、サークル活動や夜遊びに打ち込む、かつての自分のような学生のあなたに提案したい。コンカリーニョという劇場で、座・れら『不知火の燃ゆ』という演劇作品が今日から上演される。学生は割引で1,500円。通常の半額だ。この作品を、ぜひ見に行ってほしい。
 
「演劇」とは縁遠いあなただけれど、ちょっとした出来心でコンカリーニョに足を運ぶ。中に入ったあなたは、舞台を見て軽く面食らうだろう。よく足を運ぶクラブなどとはまるきり違って、そこには、さびれた漁村を思わせる景色と小屋があるからだ。
「別世界に来ちゃったな…」と思っていると、あなたより少し上くらいの年齢の若い女性が現れる。そこはどうやら九州のどこかで、目の前の小屋は彼女の実家なのだ。やがて登場する弟は、会社で製造しているプラスチック製品を褒め讃える。プラスチックがなかった時代のことなんて考えたこともなかったあなたは、これが一体いつの時代の話なのかと、とまどうかもしれない。
それでも、あなたとちっとも変わらない人たちのやり取りを見て、次第に「別世界」は「あなたと同じ世界」に変わっていく。
「水俣」という言葉が出てきたとき、あなたは昔教科書で見て以来すっかり忘れていた「水俣病」という言葉を思い出すだろう。でも、目の前の人たちは、まだそれが「水俣病」であることを知らない。
何か異変が起きていることは、誰もが察している。
 
あなたは、実際に起こった「ある家族の時間」に身を置いている。
物事がこれほどの「重み」を持って迫ってくることは、あなたにとってきっと初めての体験で、その感覚はしっかりと身体に刻まれる。
多分、この先もいろいろな場面で、あなたはこのときの「重み」を思い出すだろう。
それは、あなたの想像力を促す、とても大切な感覚なのだ。
 
本当はこの機会に、演劇にはまってくれたら嬉しいなとも思うのだけど、それはそれ。これはこれ。まずはこの感覚だけ、逃さずあなたにキャッチしてほしい。
プチプライスのファッション雑貨を1つ購入する代わりに、他では手に入らない「感覚」をまとうのも決して悪くないと思うのだけど、どうだろう?
※2/18(火)まで毎日上演。開演時間など詳細はこちらをどうぞ。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA