と言っても平日だし、特に決まった予定は入っていない。
あなたは考える。
街中のお店でも見て回ろうか、ネイルもそろそろ替え時だ、友達がつかまるならご飯を食べに行くのもいい…でも、私はあなたに提案したい。
「そのまま琴似に向かって、19時半までにコンカリーニョという劇場に行きなさい」と。
そこで起ることをこれから説明する。
JRなのか地下鉄なのかわからないけれど、「コンカリーニョ→(こちら)」と書かれた案内を頼りに、あなたは無事コンカリーニョに辿り着く。受付で「intro公演『言祝ぎ』」と書かれたチケットを購入する。
すぐ横のドアから中へ入ると、壁が黒く塗られただだっ広い空間の中央に、宇宙船の内部を思わせる四角い白い舞台(中心にはモニターがはめ込まれている)が設置されている。
舞台をはさんで置かれた客席の一つに座り待っていると、ふいに遠くから、染之助・染太郎のあのかけ声が聞こえてくるだろう。この雰囲気にものすごく不似合いな「おめでとうございま〜す」はどんどん大きくなり、次の瞬間、突然の暗闇と、無音。
ここで慌てず、一息ついて目を開く。舞台の上には、寝そべる女。
愛子という名前の、この女性のただならぬ笑い声にあなたはぎょっとするだろうけれど、大丈夫、怖がらないで。そのうちお姉さんも登場する。彼女は美香子。オネエ言葉を話す長男・英一もやってくる。
3人はあなたが普段話すようなことを話すけれど、時折、不思議な動きをする。
そして、彼女たちの会話が緊迫するたびに、あなたの心拍数もちょっと上がるだろう。同時に耳に飛び込んでくる、普段聞かない種類の音も、間違いなくそれを助長する。
この場所はほんの少し時間が歪んでいるので、あなたは彼女たちとともに、無限の宇宙の彼方を漂っているような感覚になるかもしれない。
気付くと、場内が明るくなっている。彼女たちは、もういない。
 
時計を見る。ほんの70分しか経っていない。
でも、70分前のあなたと、今のあなたは違う。多分、家に帰るまでの間も、少しあなたはフワフワしている。
翌日、会社でこの体験を同僚に話そうと思っても、きっとうまく説明できないだろう。でもきっと、仕事を終えた同僚に、あなたは言うのだ。
「そのまま琴似に向かって、19時半までにコンカリーニョという劇場に行きなさい」と。
 
※2/10(月)まで毎日上演。開演時間など詳細はこちらをどうぞ。

 

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