先週の土曜日はもう一本、大阪からいらっしゃった赤星マサノリ×坂口修一 二人芝居『貧乏ネ申』をシアターZOOで。
(すきま風を防ぐために)新聞紙で覆われた、暗い寒い何もない部屋に、ごろんと横たわる怠惰な身体(松田さん←役名)の存在感に「お?」となる始まりでした。
※あらすじや松田さんの人物設定は、上のリンク先をご参照ください。
かすかに聞こえてくる町の音や、絞られた音量で演出されるドアの開閉音、そして全体的な薄暗さなどから、「目の前にあるのに遠く」
しかし、存在感ある身体があるため「いや、やっぱり近い」
という、二つの異なる距離が存在することが、まず面白いなと。
そうして夜も更けた頃、「ネ申」と名乗る人物がそっと部屋に入ってきて、雑魚寝している松田さんの周りをそろそろと歩き回るのですが、
これがまた松田さんとは対照的な存在感のない身体で、「あ、この人は神様だから、こんなに軽そうなんだなー」と思ったぐらい。(実際はちゃんと人間の役だったのですけども。)
しかも、松田さんの主張の強い言葉に対して、ネ申の言葉は何とも弱い。これまた「この人は神様だから、言葉すらこんなに存在感がないんだなー」と思っていたのです。
そして
暗い寒い何もない部屋に、男二人。
ここまでは、音も光も会話も身体も、徹底的に抑制されております。
そういう状態だと時間の経過も曖昧になるものですが、松田さんが時折つぶやくツイートが、物語の展開だけではなく時間の経過を表すのにも効果的に使われていたのが印象的でした。
さて。
変化があるのは、松田さんが配管工として復職したとき。
部屋の電気がつくことがこんなに幸せなことだとは…としみじみ思うくらい、まず部屋が明るくなり。
松田さんの身体からは怠惰な匂いが薄らぎ、ネ申にも存在感が出てきます。
二人の関係性(因縁)が明らかになるとき、これまで抑えに抑えていた音(声)もようやく大きく開け、二つの身体がぶつかり合うことで、一気に二人の距離+過去と現在の距離+観客と舞台の距離も近づき。
最後はまた元のトーンに戻るのだけど、静けさの中に、確実に最初とは違うものを含んでいて、「へえーーー」と。
肌感覚として面白い体験のできる作品でありました。
あと、松田さんのツイートは実在するアカウントで、最後のつぶやきはツイートを見てみないとわからない、というおまけがついていたことと、
5回の上演全てにアフタートークがついていて、毎回異なる札幌の演劇人だったことも、交流を大事にしている感じで好印象。
個人的に、標準語じゃないお芝居は、すでに音的に楽しくて好きです。
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