NETFLIXの新作ドキュメンタリー『アメリカン・ファクトリー』。
オバマ前大統領夫妻が設立したプロダクション「Higher Ground Production」の一作目。Steven Bognar氏とJulia Reichert氏による共同監督作品です。
彼らとオバマ夫妻の会話も公開されていて、その中で「(監督二人が)フーヤオ工場から車で25分くらいのところに住んでいて、コミュニティの一員として、何度も工場や近所のバーを訪れ、話し、画面に現れる人たちとつながりをつくっていった」ということが話されるのですが、
監督二人は、フーヤオ工場の前進だったゼネラルモーターズの組み立て工場の閉鎖を追ったドキュメンタリー「最後のトラック」(The Last Truck: Closing of a GM Plant)でアカデミー賞ノミネートもされていたのでした。
どんな話かという先入観を持たずに、関わる人たち自身の視点で語ってもらうことを大事にしている(なぜなら、各人にそうやって物事を見る理由があるから)そうで、オバマ氏は「世の中には白黒ではなく、たくさんのグレーがあることを教えてくれる」と評価。
中国人の会長や幹部から語られる仕事観は、自分的には労働者の人権を無視しているように思えるけど、中国本社の周年パーティーでは「ファミリー感」が従業員全体から出てて、「みんなで頑張って業績を伸ばそう!」という雰囲気が感じられたし、
と思えば、出稼ぎに来ている従業員から、長時間労働や休みが少ないこと、家族に会えるのは年に1、2回という話が出てて、この中国の労働環境を望ましいものとはどうしても思えないし。(『中国はここにある 貧しき人々のむれ』で読んだことが自分の下敷きになってます。)
やっぱり、安全性や労働時間について、おかしいと思ったことは主張できるアメリカの労働文化の方が絶対良い!と思いつつ、最後は機械による自動化で続々従業員が削減されていくという…ひえ〜
それはそうと、
アメリカと中国、二つの文化の衝突ということは確かにそうなのだけど、でも、中国人従業員の責任感に感銘を受けるアメリカ人従業員がいたり、今ひとつ効率の悪いアメリカ人従業員を辞めさせる予定であることを話す中国人幹部は、同時に「気は合うんだけどね」と語り。
なんというか、オバマ氏も話していたことなのだけど、直接顔と顔を合わせて話すことで、全てに同意はできないとしても、なんらかの共通点は見つけることができる。(そして、そういう瞬間を目撃すると、いいものだなと思う。)
そうやってつながりを作ることで、(理想としては)一緒に前へ進むことができるはず…と頭ではわかってるけど、それはなかなか難しいことであり、本作にもその難しさがそのまま出ているのですが。
とはいえ
人と関わることは「グレー」が増えていくことであり、グレーを受け入れて、グレーという状態を理解して、つながりを絶たずに相手の声を聞き合っていけるなら、悪いことにはならないんじゃないかなと思った次第。
問題は、効率を重視すると、そういったグレーの時間や関係性が真っ先に削られるということでしょうか。自分だって、そうやって削ることでストレスをなくしてきたわけですし。
でもなー。
少しそおいったことに対する「術」に興味が出てきたというか、「各人にそうやって物事を見る理由がある」という監督の言葉に興味を刺激されたというか
いろんな人のいろんな理由、を知ることにつながっていくような、会話の場が自分には必要だなあ。
と
最近の興味関心の理由が自分的にストンと腑に落ちた次第。
本作は対立する価値観をそのままに映し出していて、一つの主張に導くわけではないので、いろいろ考えながら見ることができて面白いです。
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