先日のハシゴ。

まずはTO OV cafe / galleryで土岐美紗貴個展 tabiyuki[たびゆき]。

写真なんだなーと思いながら見に行って、でも空間の雰囲気や作品の佇まいみたいなものが、ちゃんと土岐さんでした。在廊されていたご本人の身体が空いたのは自分が帰る間際だったもので、作品についてはまた次の機会に聞きたい…!

そのあとは玉翠園で煎茶を買い、光の庭に立ち寄ってから、キノで『ボーイズ・ゴー・トゥー・ジュピター』を観ました。

本作の主人公ビリーは、高校を中退し、居候させてもらっている姉の家を出て自立しようと、5000ドル貯めることを目標にフードデリバリー業に勤しんでいます。

配達員用アプリのバグ(支払い通貨によって報酬が7倍になる)を発見し、そのバグが修正されないうちに5000ドル貯めようと、寝ずに頑張るビリー。

車がないと何もできなさそうなフロリダの広大な土地を、クールなスケボーで配達して回るビリーや、同年代だけど学校にも行かずにダラダラ過ごしている友人たちの日常は、「超低体温SF青春ムービー」というコピーがはまりすぎの愛らしさがありつつ。

でも、そんなビリーが毎朝見ている「成功するための秘訣」みたいなCMや、お金のあるなしにあまり関係なさそうな高齢者の突然死、実家が「太い」ゆえに稼ぐことを考えずに自分のやりたいことを追求できる同級生(先輩だったかな?)など、そこかしこに自分たちを取り巻く現代社会の実相が挟まれていて、

ほぼ固定されつつある格差社会で、持たざる者が何を軸にすえて生きていくのか、考えざるを得ない物語でした。

POPEYEのコラムにアニメーション研究者の土居さんによる本作に関する寄稿があって、

『ボーイズ』の変なエイリアンは、いま目の前の社会の価値観に沿って動き回るもの(=デリバリー業に勤しむ主人公)を脱線させる。脱線し、野生に戻ることを誘う。何者にも意味づけられないものにしてくれる。そうなるともう、彼は自分自身でいるしかない。現実から離れたら少し焦るかもしれないが、でも、救いなのかもしれない。もう人と比べる必要もない。さみしいけど、頼もしくもある。とりわけ傍らに、一緒にいてくれる人がいれば。

と書いて「観客に対しても自分らしくあるための『脱線』へと誘っている」と続けているのだけど、それを実際に、この目の前の現実で、どう実現させていけるのだろうか。

と考えると、札幌はフロリダよりもずいぶん生きのびやすいのでは…という思いが。

自分も程よく社会とつながりながら、60%くらい脱線した環境に生きているので、それを可能にしてくれている(有限の)条件に感謝しつつ、事情が変わったときにどうこの要素を維持するかというのは結構切実な問題であります。

でもまあ、それはそれとして。

久々のキノだったけど、良い映画体験でした。今年の新千歳国際アニメーション映画祭も楽しみだな。

(編)

 

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