矢部宏治『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』
いやー、読みました。やっとこさ。
憲法よりも安保や日米原子力協定を中心としたアメリカとの条約群が上位にある構造とか、放射能汚染についていくら訴訟を起こしても、絶対に勝てないようになっている法的構造とか、悲しくなりましたが…(東京電力の旧経営陣3人も無罪判決が出たし…)
一番ストンと来たのは、やっぱり憲法に関するパート!
日本国憲法の経緯に関しては、この本で知って早速読んだベアテ・シロタ・ゴードン『1945年のクリスマス』が自分の下敷きになっているのですが、本書にはそれをアップデートする考察もありつつ
矢部さんの「憲法についての悲劇は、「悪く変える」つまり「人権を後退させよう」という勢力と、「指一本ふれてはいけない」という勢力しかいないこと。「良く変える」という当然の勢力がいない」という言葉には、目から鱗。た し か に 。
「私たち日本人は1946年も、2012年(自民党改憲案)も、2017年(安倍改憲案)も、国際標準のまともな憲法を自分たちで書く力がなかった。」と書かれてて、確かに自民党にはまともな憲法を書く力がないかもしれないけど、過去には五日市憲法草案とかもありますし、今だって聡明な人たちはちゃんといるわけですから。(現政権にいないだけで)
だから、最後に著者が掲げている「(東アジアで起こりつつある世界史レベルの変化に比べて)なんとちっぽけな」日本の解決すべき課題が、本当に解決されて、上記の構造を改善できたら。
うんざりするような無力感を覚えなくても済むような日がやってくるのかも、と最後は悲しく終わらなかったので、良かった。
それにしても、「国連憲章と第2次大戦後の世界」のパートは、全く今まで触れてこなかった類の情報ばかりで、非常に勉強になりました。視野広がるなあ。
あと憲法を巡るねじれとか、「自発的隷従の歴史的起源」のパートを読んで、これまで読んできた「日本人とは」的な思想系の本で今ひとつモヤモヤしていたことが、ストンと腑に落ちた感も。
矢部さんの「戦後再発見」シリーズ、1冊目だけ読んで、あとはチェックしてなかったので、2、3冊目あたりも読んでみたい。あと『知ってはいけない -隠された日本支配の構造』も。
あ、何はなくとも、本書は必読の一冊かと!文庫も出てますので〜。
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